特許審判の状況
■平成15年09月17日 特許出願
〔発明の名称〕
記号化した対語の羅列により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する方法
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■平成15年09月18日 特許庁受付
出願番号 特願2003-363862
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■平成16年06月10日 出願審査請求書・早期審査に関する事情説明書出願
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■平成16年08月09日 拒絶通知起案 特許庁審査官 水野恵雄殿
拒絶通知
拒絶理由
A)出願請求項1に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
記)本願の請求項1に「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術(方法)と記載されているが、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、対語を羅列化することは、人間の精神活動そのものであり、従って、請求項1に係る発明は、自然法則を利用したものとはいえず、特許法上の「発明」に該当しない。
B)出願請求項1に係る発明は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記)1.詳細な説明中に記号化する対語の定義が示されているが、その記号化する対語をどのように選び出し、そして、選び出した対語が必要充分なものであるのかが不明である。
記)2.詳細の説明中に、対語を定説を根拠に各思想の範疇に振り分けているが、振り分ける基準が不明確であり、対語全てを振り分けることが出来るのか不明である。
記)3.詳細な説明中に、対語を詳細に根拠付けて羅列化しているが、選択された対語全てを羅列化することが可能なのか不明である。
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■平成16年08月17日 特許庁・拒絶理由通知書発送
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■平成16年10月05日 意見書提出
意見書
平成16年08月09日起案の拒絶通知に対して、次の意見書を提出する
意見)1.対語を羅列化することは人間の精神活動そのものであるとは一概に言えない。なぜなら対語を自然科学、社会科学、人文科学の定説(自然法則)を根拠に列挙することは人間の精神活動とも言えるであろうが、対語を自然科学、社会科学、人文科学の定説(自然法則)を根拠に羅列化することによって、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を限定的に、そしてコンパクトに理論化することは先のモノとは別のモノであり、それは自然法則を利用した今までにない人為的に創作された発明であるからである。
即ち、上記のことから「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠に理論化する技術」は、自然法則を利用した発明であると言える。
また自然法則それ自体でもない。なぜなら記号化した対語を羅列化する事は自然法則そのものではないからである。それに自然法則イコール人間の精神活動とする事も根拠がない以上言えません。即ちこの事からも「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠に理論化する技術」は、自然法則を利用した発明であると言える。
意見)2.また、単に対語を羅列化することは、広義のある意味において文法とも言えないことはない。しかしそれらの総てが人間の精神活動そのものであるとは次の理由から言えない。なぜなら申請した発明は、自然法則(自然科学、社会科学、人文科学の定説)を根拠に対語を羅列化しているからである。即ち自然法則は人間の精神活動そのものではないため、単に対語を羅列化することとは明確に違い自然法則を利用した発明であると言えるのである。
つまり、上記の理由から「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠に理論化する技術」は、自然法則を利用した発明であると言えると言うことである。
意見)3.拒絶理由通知書:特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない事に対してお答えする前に、この度の特許請求の範囲:請求項1と特許法第36条第4項に関して今一度押さえて頂きたい。
【請求項1】宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、コンパクトに理論化する技術(方法)。
【特許法第36条第4項】前項第三号の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載しなければならない。
拒絶通知書 B記1(記号化する対語の選び方に関して)
この度の発明は対語の選び方に関して請求をしているわけではないので、特許法第36条4項に記載されている「通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確に十分に、記載しなければならない」の程度で十分ではないでしょうか。また、対語に関してはJIS規格、文部科学省国語審議会、国立国語研究所等で工業規格、表外漢字字体表等が取り決められており、ここで審議する事柄ではないのではないでしょうか。
拒絶通知書 B記2
この度の発明は対語を自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠に各思想の範疇に振り分ける基準に関して請求をした訳ではありません。自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠に、記号化した対語を羅列する技術であります。振り分け基準を要求するのであれば、それは自然科学、社会科学、人文科学の定説です。またすべての対語が振り分けできるのかが不明であるかどうかに関してですが、振り分けができない対語があるとすれば自然法則で説明のつかない事物がまだあると言うことです。またそれは、自然法則を取り扱う特許庁が把握できていない事物があると言うことにもつながります。拒絶するのであれば、振り分けできない対語を列挙して頂きたい。列挙できない以上はすべてが振り分けできないとは直ぐに断定できませんし、科学的分析をしてから断定しましょう。
また、この度の発明はすべての対語を記号化し、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、羅列化できるのかできないのかを明らかにするものでもある。羅列化することが不可能な対語があったとしても何ら問題はない。その事は寧ろ、羅列が不可能な対語のその理由が見つかるのでこの発明の利点である。
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■平成17年02月28日 拒絶査定起案 特許庁審査官 水野恵雄殿
拒絶査定
拒絶査定)出願については、平成16年8月9日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。
備考)拒絶理由で述べたように、対語を羅列化することは、人間の精神活動そのものであるので、当該請求項に係る発明は、自然法則を利用したものとは言えない。
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■平成17年03月08日 平成17年02月28日起案拒絶査定認証
認証者 経済産業事務官 平瀬恵美子殿
同日拒絶査定通知
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■平成17年04月01日 同年02月28日付拒絶査定を不服とし、審判請求書を特許庁に出願
審判請求番号 不服2005-05670
審査請求書
【請求の趣旨】
平成17年02月28日起案の拒絶査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。
【請求の理由】
【手続の経緯】
出願 平成15年09月17日
拒絶理由通知 平成16年08月17日
意見書 平成16年10月05日
手続補正書 平成16年10月05日
拒絶査定 平成17年02月28日
同 謄本発達 平成17年03月08日
手続補正書 平成17年04月01日
【拒絶査定の理由の要点】
拒絶査定の拒絶理由は、平成16年08月09日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものであるとのことである。
尚、平成16年08月17日の拒絶通知に対する意見書並びに手続補正書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせないとのことである。
更に、特に備考として、拒絶理由で述べたように、対語を羅列化することは、人間の精神活動そのものであるので、当該請求項に係る発明は、自然法則を利用したものとは言えないとのことである。
しかし、このことは裏を返せば、対語を羅列化することが、人間の精神活動そのものでるとのことを、覆す理由があれば、特許査定できると言い切っても過言ではないとのことである。
また先の「言い切っても過言でないとのことである」と言える根拠は他にもある。それを以下にご説明いたします。
審査官 水野恵雄氏(以下審査官)は、拒絶査定の備考で「拒絶理由で述べたように、対語を羅列化することは、人間の精神活動そのものである」としている。しかいその事は審査官自身も、何かしら(法則等)で、対語が羅列できることを認めていることを露呈している。
即ち審査官は、その対語の羅列が規範法則で羅列できるのであり、また規範法則と自然法則の組み合わせで羅列できるのであり、更に規範法則も自然法則も利用せず羅列できるのであると、言うなればしていると言うことである。
そして、それは裏を返せば、審査官は自然法則のみを利用しているのなら、人間の精神活動そのものとは言えず、拒絶理由を覆すに足る根拠であるから、査定できると言っているということである。
であるからして、対語を羅列化することが、人間の精神活動そのものでるとのことを、覆す理由があれば、特許査定できると言い切っても過言ではないとのことである。
【本願発明が特許されるべき理由】
(a)本願発明の説明 1
本願発明の特徴は、特許請求の範囲に記載された宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を理論化するということにおいて、記号化した対語を自然法則のみで羅列化するというところに特徴を持つものである。またその記号化した対語を羅列化するということが、人間の精神活動そのものであるとして拒絶査定されたものである。しかしこの拒絶査定には、対語を羅列化することを人間の精神活動そのものであるとしたところに問題がある。なぜなら規範法則(文法)を根拠に対語を羅列化するということと、自然法則を根拠に対語を羅列化するということと、その両方の法則も使わずに対語を羅列化するということを、同一としているという点に問題があるからである。
次に対語を羅列化するということには、三種類に分類できることをご説明し、同時にこの度の本願発明が特許されるべきものであることをご説明いたします。
先ず一つ目は、規範法則を根拠に対語を羅列化することである。因みに学校などでは規範文法として教えている。これは特許法第29条第一項柱書の人間の精神活動そのものとすることは出来ない。なぜなら規範法則を根拠にしているからである。しかし特許法第2条1項の発明の定義には該当しない。なぜなら自然法則を利用していないからである。
二つ目は、この度の本願発明のような自然法則を根拠に対語を羅列化することである。これは自然法則のみを根拠にしている為、特許法第2条1項で定義されるとおり、特許されるべきものである。
三つ目は、規範法則、自然法則のどちらをも根拠とせず、一般に無意味な羅列と言われるものである。これは特許法第29条第一項柱書の人間の精神活動に該当する。なぜなら何かしらの法則を利用しておらず、人の心の働きで羅列されたようなものである。それであるならば人間の精神の根本と言えるからである。
以上のことから、一つ目と三つ目を利用した発明は、特許法第29条第一項柱書により、特許にはならないと言うことであり、二つ目のみを利用した発明は特許法第2条により特許になると言うことである。
よって、本願の発明の対語を羅列化することには、上記の説明の一つ目と三つ目を利用しておらず、特許法第二条で定義されるとおりのものである。
(a)本願発明の説明 2
本願発明の請求の範囲は、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術(方法)である。それを踏まえれば、発達日平成16年08月17日付拒絶理由通知のB)この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法36条第4項第1号の要件を満たしていないというのは誤りである。その理由を次にご説明いたします。
図は本願発明の請求の範囲に記した技術を応用した効果である。よって特許法36条第4項第1項に記された通常知識を有する者が本願発明の請求の範囲に記した技術を応用、活用したとき、同じような図となるということである。つまり図は、本願発明の請求の範囲に記した技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したと言うことである。この点から、特許法第三十六条第四項の通商産業省令(経済産業省令)で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない(特許法施行規則第24条の2)を充分満たしている。
また、審査官自身も先の「本願発明が特許されるべき理由 1」で述べた通り対語が何かしらの法則で羅列化できることは認めている。図からはその法則が自然法則のみを根拠に羅列化しているということが、発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載として伝われば良いのである。よって発明の技術上の意義を理解するために、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、必要な事項の記載かどうかが判ればよいのであり、即ち図からは、本願発明の特許請求の範囲に記された発明の技術上の意義が、明細書で説明してある箇所からご理解頂ければ良いのである。
また更にそれ以外を判断する拒絶理由は無効とも言える。図からは、発明の技術上の意義を、明細書で説明してある箇所から理解できればよいのであり、それ以上を望む必要は特許請求の範囲、明細書からは見あたらない。
よって本願発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
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■平成17年04月22日 審査官による前置審査着手(特許法第162条)
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■平成17年05月20日 審査官による前置審査解除
審判官による合議体構成決定
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■平成17年05月20日 審判合議体構成官決定
・審判長 特許庁審判官 川名幹夫殿
・ 特許庁審判官 橋本正弘殿
・ 特許庁審判官 松浦 功殿
・ 審判書記官 土田浩造殿
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■平成17年05月24日 審判合議体構成官決定(変更)
・審判長 特許庁審判官 井関守三殿
・ 特許庁審判官 林 毅 殿
・ 特許庁審判官 吉岡 浩 殿
・ 審判書記官 土田浩造殿
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■平成18年05月18日 拒絶理由通知書起案 特許庁審判長 特許審判官 井関守三殿
同年06月13日 拒絶理由通知書発送
拒絶理由
この審判事件に関する出願は、合議の結果、以下の(一).又は(二).の理由によって拒絶すべきものと認められます。
(一).この出願は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たしていない。
記
1.【0004】段落には、「記号化した対語だけを用い、実証された自然法則等で根拠付け、その記号化した対語を羅列化する事で、今まで不可能であった宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、コンパクトに、そして限定的に理論化することが可能である。」と記載されているが、
(A)「対語だけ」を前提として用いる理由が不明である。
(B)多くの思想のうち、「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化」の4つの思想のみを対象とする理由が不明である。
2.「定説」の定義が不明である。
(A)物理法則のように普遍的な法則であるのか、
(B)ある特定の個人(あるいはグループ)の思想であるのか、
(A)の場合、社会科学や人文科学に普遍的な法則があることは常識を逸脱するものであり、(B)の場合、個人(あるいはグループ)により結果が異なることとなるから、再現性が保証されない。
3.「産業上の利用分野」が明確でなく、実用の形態が不明である。
【0023】段落には、「国家、企業の労務管理技術、職業適性判断技術、精神患者治療技術等、幅広い性格判断関連技術の分野」で実用が可能であるとあるが、実用とは具体的にどのように実際に用いるのか(例えば図4の羅列化された対語をどのように用いるのか)不明である。「辞書、学術書に掲載する」ことが実用である旨記載されているが、掲載された情報をどのように用いればよいのか不明である。「教育資材」としてはどのような教育にどのように利用するのか不明である(著作権法で保護された著作物の購読とどう異なるのか)。
「御守り」には、どのような効能があるのか不明である。
「立体化」「アイテム化」は具体的にどのようにして達成されるのか不明であり、産業上の利用することができる形態も不明である。
4.詳細な説明には「実証された自然法則等で根拠付ける」こと(【0004】段落)、「自然法則、社会科学、人文科学の定説を根拠に」すること(【0005】段落)、羅列化した結果(図4)は記載されているが、途中の手順、つまり、どのような機能、手段が、定説を根拠に用いて、どのように羅列化するのかが記載されていない。したがって、詳細な説明の記載は当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載されたものとは認められない。
更に具体的に、各思想の選別段落、羅列化の段階につき、以下の5.〜7.で指摘する。
5.図2に係る各思想の選別段階について
図2は、記号化した対語を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇を、それぞれの定義に照らし合わせて選別したものである旨説明されているが(【0015】段落参照)、前記自然科学、社会科学、人文科学の定説(特に社会科学、人文科学の定説)とは、具体的にどのような定説であるのか不明である。
また、前記各思想の範疇を、それぞれの定義に照らし合わせて選別するとは、具体的にどのような機能、手段において、記号化した対語に対して前記定説を具体的にどのように用いて選別されているのか不明である。
図2の、「記号化した対語を各思想に選別した大まかな理由」の項目の理由を参照すると、自然法則以外の法則や、人為的な取決め、人間の精神活動にあたると解されるものがみられるが、この選別した大まかな理由と対応する定説が具体的にはどのような定説であり、この具体的な定説を根拠に前記「記号化した対語を各思想に選別した大まかな理由」の項目の理由が具体的にどこでどのように生成され、記号化した対語に前記理由がどこでどのように適用され、思想の項目(宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化)が選別されるのか不明であり、したがって、詳細な説明の記載は当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載したものとは認められない。
6.図4の羅列化の段階について
【0016】段落には、「図4は、記号化した対語を宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇に振り分けて、記号化した対語の語彙概念の発生した順に羅列したものである。その羅列化は現代科学(自然科学、社会科学、人文科学)が明らかにした自然法則の事実、定説を根拠にして、羅列化されたものである。」と記載され、【0018】〜【0022】には、有無、理気、体用など、一部について説明されているが、対語の間の羅列順(例えば、理気と体用)を決めるとしている量子力学の定説、法則が何であるのか具体的に記載されておらず(他の対語間の定説も同様)、実質的には結果としての羅列結果(図4)が示されているだけで、途中の羅列化の手順が、具体的にはどのような自然法則の事実、定説を根拠にし、どこでどのような機能、手段を用いて決められて羅列化されるのか記載されておらず、したがって、詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載したものとは認められない。
7.例えば、図4において、宇宙論、生命誕生に分類された対語のうち、4つ目以降の対語に係る定説や、人類誕生、文明開化に分類された対語の羅列の根拠となる定説が不明である。(例えば、人類誕生の分類において、072左右と073上下の順、087大小と089長短の順の、根拠となる定説や、核定説を根拠として発生した順を決定する理由がどのような手段によりどのように生成されるか具体的に説明されていない。また、文明開化に分類された対語に関し、前記記号化した対語の語彙概念の発生した順に羅列したものであることを裏付ける、根拠となる定説や、前記定説を根拠にした理由がどのような理由であるのか記載されていない。)
このように、羅列の根拠となる定説、定説を根拠にした発生した順を決める理由が不明であるので、統一的理論(【0008】段落)であるかどうかも不明である。
8.【請求項1】には、「技術(方法)」と記載されているが、方法の発明であるのか(特許法第2条のどのカテゴリに属する発明であるのか)不明確である。
また、この記載は、特許を受けようとする発明を特定するために必要とする事項を不明確にしている。
9.カテゴリが方法の発明であるとすると、「人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化する」は、対語に対して定説をどのように用いて羅列化するのかの手順の記載がなく、特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載したものとは認められない。
方法の発明であるとすれば、請求項1に係る処理を行う主体が不明である。(人間が行う態様が含まれていることに留意されたい。)
10.【請求項1】には、「記号化した対語だけを用い」「人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化する」とあるが、用いたり、羅列化する主体、あるいは、具体的な機能、手段が不明である。
(二).本願請求項1に係る発明は、下記の理由により、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であることを要件とする特許法第2条に規定する「発明」に該当しないから、特許法第29条第1項柱書きの規定により、特許を受けることができない。
記
1.本願請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術(方法)。」
前記事項の、「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化する」についてみると、自然法則以外の社会科学、人文科学の定説(法則)あるいは人為的な取決めを利用する部分には、自然法則を利用するものはない。
また、対語を羅列化するための「自然科学の定説」が具体的に開示されていないので、「自然科学を根拠にして」という記載のみから自然法則を利用するものであるとは認めることができない。
そして、前記社会科学、人文科学の定説を根拠にするもののほか、自然法則を対象とする部分があるとしても、自然法則を当該自然法則と対応する概念を対語として扱うものであり、この概念の領域に移行した対語を操作することはもはや自然法則を利用するものではない。また、自然法則を根拠とした定説は自然法則ではなくて自然法則以外の法則の概念に移行しているはずであり、この定説を根拠として対語を羅列化するのに利用しても自然法則を利用することにはならない。
前記自然法則を根拠とし概念に移行した定説を利用することは、自然法則以外の法則、あるいは人為的な取決めを利用することであり、このような自然法則以外の法則、あるいは人為的な取決めを利用して、前記羅列化の操作をしても、どこにも自然法則を利用したものはなく、結局、請求項1に係る発明は、社会科学、人文科学の定説を根拠にして羅列化する部分にも、自然科学の定説を根拠にして羅列化する部分にも、自然法則を利用したものはなく、全体として自然法則を利用した発明であるとはいえない。
請求人は、請求の理由の、本願発明が特許されるべき理由(a)本願発明の説明1において、2つ目は、本願発明のような自然法則を根拠に対語を羅列化することであり、これは自然法則のみを根拠にしている為、特許法2条1項で定義された発明にあたる旨主張しているが、自然法則を根拠にして羅列化しても、前述のように、自然法則を利用して羅列化するものではないので、この主張は採用できない。
2.前記理由(一)8.〜10.で指摘したように、請求項1に係る発明は、人間が主体となっている態様を排除していないので、全体としてみれば、人間の精神活動を利用したものである。人間の精神活動を利用したものは自然法則を利用したものではない。
よって、請求項1に係る発明は、自然法則を利用したものとはいえず、特許法2条1項で定義された「発明」にあたらない。
3.前記理由(一)2.で指摘したように、「定説」が、ある特定の個人(あるいはグループ)の思想であると、個人(あるいはグループ)により結果が異なるものになるから、再現性が保証されず、再現性が保証されない定説を根拠にする思想は、自然法則を利用した技術的思想ではない。
請求項1に係る発明は、「定説を根拠」にしており、前記再現性が保証されない定説を根拠にする態様を排除していないので、全体としてみれば、自然法則を利用した技術的思想ではない。
よって、請求項1に係る発明は、自然法則を利用したものとはいえず、特許法2条1項で定義された「発明」にあたらない。
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■平成18年07月26日
同年05月18日付起案の拒絶理由通知書を不服とし、意見書を特許庁に提出
審判請求番号 不服2005-05670
意見(意見の内容)
【意見1】
1(A)「対語だけ」を前提として用いる理由が不明であるに関して
この度の発明において、対語だけを前提としていると云うわけでは決してありません。限定的、コンパクト化するという点において、合理的限定化解釈の成り立つ上で、更にそれ自体を特徴とすると云う上で、対語を用いたということです。また、対語に関しては、先の平成16年10月5日提出日の意見書でも述べさせていただきましたとおり、JIS規格、文部科学省国語審議会、国立国語研究所等で工業規格、表外漢字字体表等が取り決められております。
よって、上記のことから「対語だけ」を前提として用いる理由は明確である。
1(B)多くの思想のうち、「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化」の4つの思想を対象とする理由が不明であるに関して
この発明において、多くの思想のうち宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化のみを限定していると云うわけではない。ただ、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化と記載している理由は、特許法第36条第4項1の条文を鑑み、出願するにあたって発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであることが必要であるからである。それを踏まえ、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化等ともせず、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化のみともしていません。等とすれば限りがなく、のみとすれば限定しすぎ、技術の分野における通常の知識を有する者がその実施を妨げられる可能性があるからである。
また逆に、等やのみと限定しなかった場合、明確かつ十分に記載したものではなくなるとも言えません。なぜなら、特許法第36条第4項1の条文の「明確かつ十分に記載されたものであることが必要である」には、「実施をすることができる程度に」という前置きがあるからです。
よって、多くの思想のうち、「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化」の4つの思想を対象とするということは云えない。
【意見2】
「定説」の定義が不明であるに関して
2(a)物理法則のように普遍的な法則であるのかに関して
広く検証されて確実なものとされたものが定説である(参考文献 広辞苑第五版)。定説を覆すものがない以上は、普遍的な法則がありうるとしても過言ではないものである。
2(b)ある特定の個人(あるいはグループ)の思想であるのかに関して
ある特定の個人(あるいはグループ)の思想が、広く検証されて確実なものであるならば、それはもはや定説である。
2(a)の場合、社会科学や人文科学に普遍的な法則があることは常識を逸脱するものであり、(b)の場合、個人(あるいはグループ)により結果が異なることとなるから、再現性が保証されないに関して
社会科学とは、社会的諸事象を科学的方法による観察・分析・考察を基にして、客観的法則性を把握したものである。即ち、社会的諸事象の中に、科学的な普遍法則を見出そうとするものであり、そのある説が広く検証されて確実なものとされたものであるならばそれはもはや定説である。そしてその場合、個人(あるいはグループ)により結果が異なることとならず、再現性が保証されうる。
また、【0009】段落において、同じ事象においてどちらも否定意見がなく、複数の定説が成り立つような場合等の結果が異なることとなった場合にも触れている。「もしあらゆる学問の定説を根拠にして、記号化した対語の羅列が異なる見解が現れたとしても、この度の発明ではその問題点が一目で判別可能である。また羅列できない記号化した対語が現れた場合も同様で、その問題点が一目で判別可能である」とこの発明の利点を記載し、この発明の特徴を述べている。
【意見3】
「産業上の利用分野」が明確でなく、実用の形態が不明であるに関して
今現在、産業上で実用化しようとしている計画で、具体的な実用形態を説明させていただきます。
先ず一つは、最新の自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠に、記号化した対語を羅列化したものを、定規のような携帯用アイテムに加工します。そのアイテムは、医学生、法学生などが学校等で自然科学、社会科学、人文科学の定説などを学ぶ場合、一体どの様なものなのかを携帯用アイテムの中で認識をしていただくという教育資材です。また、それは携帯用アイテムのため小型であり、加工次第で辞書、学術書の付録のように分離可能とすれば単純に著作権だけで保護されうるものではありません。そして、お守りとして商品化した場合は、自然科学、社会科学、人文科学の定説などを学べるので学力向上の御利益となります。
二つ目は、RPGなどへの応用です。具体的には、この発明を利用した謎を解くと云ったもので、RPGの主人公がこの発明を利用した謎を解いたとき、RPGないでアイテムを得たりるといったストーリーにおいて、この発明が産業上利用できます。また、国家、企業の労務管理技術は、昨今の社会情勢を踏まえ、RPGを活用したりすることが増え、自身がRPGの主人公になり、問題を解決すると云った労務管理施策を施すことが多くなっており、そのような中でこの発明を利用したアイテムが産業上利用できます。
三つ目は、人工知能において、人工脳の自然法則認識技術等として活用でき、教育用ロボット等で産業上利用ができます。
【意見4】
発送番号043722の拒絶理由書(一)4に関して
羅列とは、つらなり並ぶことであり、また、つらね並べることである(参考文献 広辞苑第五版)。途中の手順等などは、既に【特許請求の範囲】や【0001】で記載したように「理論化する」、「理論化しようとする」という機能、手段を用いてということである。
また、詳細な実施例等は、【発明が解決しようとする課題】、【実施例1】等で記載させていただいております。そちらをお読み下さい。
よって、当事者が本願発明の実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載したものであり、詳細な説明の記載と認められうる。
【意見5】
発送番号043722の拒絶理由書(一)5に関して
自然科学、社会科学、人文科学の定説(特に社会科学、人文科学の定説)とは、具体的にどのような定説であるか不明であるとのことであるが、【意見2】でも意見させていただきましたとおり、広く検証されて確実なものと認められた説です。例えを挙げて、具体的に説明をさせていただきます。
社会科学を論ずるときよく見聞きするかと思いますが、「人間活動の背後には神のみえざる手があって、個人が生得的善を表現し得る自由な状況へと個人を促すのであり、社会科学はその手の機能する客観的法則を発見し、その操作を容易にするためすすむべき(引用文献 丸善エンサイクロペディア大百科)」と社会科学は定義されております。そして、その客観的法則が広く検証されて確実なものと認められたものであれば定説である。
また、具体的にどのような機能、手段において、記号化した対語に対して前記定説を具体的にどのように用いて選別されるのか不明であるとのことであるが、この意見書の【意見1】で説明させていただきましたとおり、対語に関してはJIS規格、文部科学省国語審議会、国立国語研究所等で工業規格、表外漢字字体表等が取り決められており、そしてこの度の記号化はそれを基に記号化しており、自然科学、社会科学、人文科学の定説をそのJIS規格、文部科学省国語審議会、国立国語研究所等で工業規格、表外漢字字体表等を基に記号化した対語の概念に照らし合わせて選別してあります。その自然科学、社会科学、人文科学の定説は、【参考文献】で列挙した文献を基にしております。詳しくは【実施例1】等をご覧いただきたく存じます。そして、その参考文献の一部を別途物件提出書のより提出いたします。
また、この本願発明は、どのように用いて選別されるのか不明であるとのことであるとのことであるが、その選別方法、選別技術に関して特許出願(特許請求)したものではない。
よって、上記理由から詳細な説明の記載は当事者が本願発明の実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載したものだと認められうる。
【意見6】
発送番号043722の拒絶理由書(一)6に関して
発送番号043722の拒絶理由書(一)6の中段に、「対語の間の羅列順(例えば、理気と体用)を決めるとしている量子力学の定説、法則が何であるのか具体的に記載されておらず(他の対語間の定説も同様)、実質的には結果としての羅列結果(図4)が示されているだけで、途中の羅列化の手順が、具体的にはどのような自然法則の事実、定説を根拠にし、どこでどのような機能、手段を用いて決められているのか記載されておらず」に関して、まず意見が前後するかも知れませんが、「どこでどのような機能、手段を用いて決められているのか」に関しては、【特許請求の範囲】や【0001】で記載したように「理論化する」、「理論化しようとする」という機能、手段を用いてということである。そして、量子力学の定説、法則が何であるのか、それはビックバン、ニュートンの第一法則、ニュートンの第二法則、ニュートンの第三法則、ドップラー効果等である(参考文献1 山田克也著「宇宙のからくり」 参考文献2 磯部e三著「宇宙のしくみ」)。
【意見7】
発送番号043722の拒絶理由書(一)7に関して
発送番号043722の拒絶理由書(一)7の「例えば、図4において、宇宙論、生命誕生に分類された対語のうち、4つ目以降の対語に係る定説や、人類誕生、文明開化に分類された対語の羅列の根拠となる定説が不明である。(例えば、人類誕生の分類において、072左右と073上下の順、087大小と089長短の順の、根拠となる定説や、該定説を根拠として発生した順を決定する理由がどのような手段によりどのように生成されるか具体的に説明されていない。また、文明開化に分類された対語に関し、前記記号化した対語の語彙概念の順に羅列したものであることを裏付ける、根拠となる定説や、前記定説を根拠にした理由がどのような理由であるか記載されていない。)」に関して、次ぎに幾つか意見を述べさせていただきます。
一、既に【意見5】で述べさせていただきましたが、この発明は【請求項1】として「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術(方法)」であり、どのように用いて選別されるのか不明であるとのことであるとのことであるが、その選別方法、選別技術に関して特許出願(特許請求)したものではない。敢えて選別方法、選別技術に言及すれば、対語に関してはJIS規格、文部科学省国語審議会、国立国語研究所等で工業規格、表外漢字字体表等が取り決められており、そしてこの度の記号化はそれを基に記号化しており、自然科学、社会科学、人文科学の定説をそのJIS規格、文部科学省国語審議会、国立国語研究所等で工業規格、表外漢字字体表等を基に記号化した対語の概念に照らし合わせて選別してあるということである。
二、根拠となる定説や、該定説を根拠として発生した順を決定する理由がどのような手段によりどのように生成されるか具体的に説明されていないとのことであるが、【意見6】でも述べさせていただきましたが【特許請求の範囲】や【0001】で記載したように「理論化する」、「理論化しようとする」という機能、手段を用いてということであり、例えの072左右と073上下の順、087大小と089長短の順の、根拠となる定説や、該定説を根拠として発生した順を決定する理由に関して云えば、認知心理学における理論、認知言語学における理論、生成言語学の統合論、生物学における発達論(能の発達論)、進化論等である。ただし、自然科学の分野においては定説が乱立するという状況等があり、その場合においては当業者によって結論が異なると云うこともある。この場合は、既に【意見2】でも述べさせていただきましたとおり、【0009】段落において、同じ事象においてどちらも否定意見がなく、複数の定説が成り立つような場合等の結果が異なることとなった場合にも触れ、「もしあらゆる学問の定説を根拠にして、記号化した対語の羅列が異なる見解が現れたとしても、この度の発明ではその問題点が一目で判別可能である。また羅列できない記号化した対語が現れた場合も同様で、その問題点が一目で判別可能である」とこの発明の利点を記載し、この発明の特徴を述べている。
三、ここで拒絶理由となっていることは、特許法第三六条四項の解釈であると思われる。発送番号043722の拒絶理由書(一)2において、「(a)の場合、社会科学や人文科学に普遍的な法則があることは常識を逸脱するものであり、(b)の場合、個人(あるいはグループ)により結果が異なることとなるから、再現性が保証されない」のとおり、再現性が保証されないから拒絶理由となっていると思われるが、この発明は【0004】段落において「記号化した対語だけを用い、実証された自然法則等で根拠付け、その記号化した対語を羅列化する事で、今まで不可能であった宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、コンパクトに、そして限定的に理論化することが可能である。そして、それはまたある意味において、各思想の内容理解を簡潔にし、一般人にも普段馴染みのある対語だけを用いた為に、難解な各思想に容易に親しめるという特徴をも同時に持つものである」、また先の意見でも述べさせていただいたとおり、【0009】段落の後半において「もしあらゆる学問の定説を根拠にして、記号化した対語の羅列が異なる見解が現れたとしても、この度の発明ではその問題点が一目で判別可能である。また羅列できない記号化した対語が現れた場合も同様で、その問題点が一目で判別可能である」とし、更に【発明の効果】の【0012】段落において「記号化した対語の異なる見解が現れたとしても、本発明ではその問題点が一目で判断可能となる利点もあり、更には羅列できない記号化した対語が現れたとしても、その原因が判別可能となる利点もある」としている。これらの条件を考慮すれば、当然に特許法第三十六条四項の条文中の「その(発明の)実施をすることができる」に当てはまる。なぜなら、そこの箇所の解釈は「請求項に記載の発明が物の発明にあってはその物を作ることができ、かつ、その物を使用することができることであり、方法の発明にあってはその方法を使用できること(物を生産する方法の発明にあってはその方法により物を作ることができること)である」からである。更に、特許法施行規則第二十四条の二(委任省令)「特許法第三十六条第四項の通商産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしらければならない」において、発明の技術上の意義が強調されているからである。
なお、特許法第三十六条第六項に関しては、審査基準等ガイドラインとなりうる条文解釈の通達等詳細がない。このような場合、特許法施行規則第二十四条の二(委任省令)を類推解釈し、また特許法第三十六条第四項を満たせば自ずと特許法第三十六条第六項の基準を満たしたと考え得る。
【意見8】
発送番号043722の拒絶理由書(一)8に関して
【請求項1】には、「技術(方法)」と記載されているが、方法の発明であるのか(特許法第2条のどのカテゴリに属する発明であるのか)不明確であるとのことであるが、この発明は教育資材等の発明であり、同時に方法にもなりうる為に「技術(方法)」と記載したものである。不明確とのことであるなら、「技術」と手続補正することはやぶさかではない。
【意見9】
発送番号043722の拒絶理由書(一)9に関して
先の【意見8】で述べさせていただいたように、【請求項1】を「技術」と手続補正する。
【意見10】
発送番号043722の拒絶理由書(一)10に関して
【請求項1】には、「記号化した対語だけを用い」「人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化する」とあるが、用いたり、羅列化する主体、あるいは、具体的な機能、手段が不明であるとのことであるが、次ぎにいくつか意見を述べさせていただきます。
一、発送番号043722の拒絶理由書(一)10の拒絶理由は、発送番号043722の拒絶理由書(一)1での拒絶理由とされたとおり、人文科学の定説に普遍的な法則がないとの前提にしている。既に【意見1】等でも述べさせていただいたとおりだが、更に違う側面から述べさせていただく。特許法第二条で、「自然法則を利用した」との定義がある。自然法則とは、「自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものを指す(広辞苑 第五版)」とある。人文科学の範疇でもある心理法則において、自然法則が十分あり得ることを意味している。
よって、発送番号043722の拒絶理由書(一)10に関しては、誤った認識の上での拒絶理由である。
二、用いたり、羅列化する主体、あるいは、具体的な機能、手段が不明であるとのことであるが、【意見4】等で述べたとおりである。また、発送番号043722の拒絶理由書(一)10の拒絶理由での主体として云わんとする意味が不明確である。しかし、発送番号043722の拒絶理由書(二)2において、主体が人間であるとしているので、発送番号043722の拒絶理由書(一)10の拒絶理由での主体は恐らく人間としているということで、以下の意見を述べさせていただきます。
【0002】段落の「理論として証明する術」、【0004】段落の「各思想の内容理解を簡潔にし、一般人にも普段馴染みのある対語だけを用いた為に、難解な各思想に容易に親しめる」、【産業上の利用可能性】【0023】段落の「教育資材」の記載等に着目すれば、人間が主体とは言い切れない筈である。これは人間が、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想に、何らかの一連の法則を学習するための技術(道具)である。それは西尾正左衛門殿が発明した特許第27983号の亀の子たわしと何ら異なることはない技術(道具)である。
【意見11】
発送番号043722の拒絶理由書(二)1、2に関して
既に対語を羅列化するということには、以下のように三種類に分類できることを、平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1において、以下のように述べさせていただきました。
平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1
「対語を羅列化するということには、三種類に分類できることをご説明し、同時にこの度の本願発明が特許されるべきものであることをご説明いたします。
先ず一つ目は、規範法則を根拠に対語を羅列化することである。因みに学校などでは規範文法として教えている。これは特許法第29条第一項柱書の人間の精神活動そのものとすることは出来ない。なぜなら規範法則を根拠にしているからである。しかし特許法第2条1項の発明の定義には該当しない。なぜなら自然法則を利用していないからである。
二つ目は、この度の本願発明のような自然法則を根拠に対語を羅列化することである。これは自然法則のみを根拠にしている為、特許法第2条1項で定義されるとおり、特許されるべきものである。
三つ目は、規範法則、自然法則のどちらをも根拠とせず、一般に無意味な羅列と言われるものである。これは特許法第29条第一項柱書の人間の精神活動に該当する。なぜなら何かしらの法則を利用しておらず、人の心の働きで羅列されたようなものである。それであるならば人間の精神の根本と言えるからである。
以上のことから、一つ目と三つ目を利用した発明は、特許法第29条第一項柱書により、特許にはならないと言うことであり、二つ目のみを利用した発明は特許法第2条により特許になると言うことである。」
上記(平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号50500599854)(a)本願発明の説明1)のことを踏まえ、発送番号043722の拒絶理由書(二)1、2に関して、以下に意見を述べさせていただきます。
発送番号043722の拒絶理由書(二)1の下段にある「自然法則を根拠にして羅列化しても、前述のように、自然法則を利用して羅列化するものではない」とのことであるが、「自然法則を根拠にして羅列化する」ということは特許法二条の「自然法則を利用した」に該当する。
それは上記(平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1)で説明させていただいたとおり、言語の羅列には三種類あることからである。
また、利用とは「利益になるように物を用いること。役に立つように用いること(広辞苑 第五版)。役立つようにうまく使うこと。また、役に立たせること(大辞泉)。」である。【要約書】の【解決手段】において、「記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を基に、自然科学、社会科学、人文科学の定説で根拠付け、その記号化した対語を羅列する事で、限定的に、そしてコンパクトに理論化を可能とする」とは、つまり「自然科学、社会科学、人文科学の定説(法則)を利用し、その記号化した対語を羅列する事で理論化に役立たせる」ということであるからである。
もっと詳しく云えば、理論化を可能とするという利益のために、自然法則を利用して対語を羅列化することである。用いる言葉が違うだけのことであり、表現方法が違うというだけである。
また、発送番号043722の拒絶理由書(二)2において、「人間が主体となっている態様を排除していないので、全体としてみれば、人間の精神活動を利用したものである」とのことであるが、平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1を踏まえていただきたいのと、先の【意見8】、【意見9】、【意見10】等を読んでいただきたい。
【意見12】
発送番号043722の拒絶理由書(二)1、2に関して
先の【意見2】、【意見7】(特に【意見7】三)等で述べさせていただいたとおりである。
【意見13】
先の【意見1】、【意見2】、【意見3】、【意見4】、【意見5】、【意見6】、【意見7】、【意見8】、【意見9】、【意見10】、【意見11】、【意見12】で述べさせていただいたとおり、発送番号043722の拒絶理由書(一)、(二)での拒絶理由には該当せず、特許法第三十六条第四項又は第六項の規定する要件を満たし、また、特許法第二条の規定に当然に該当し、速やかに特許されうるものである。
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■平成18年12月27日
審決
不服2005-5670
審判長 特許庁審判官 井関 守三 殿
特許庁審判官 吉岡 浩 殿
特許庁審判官 林 毅 殿
特願2003-363862〔記号化した対語の羅列化により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する技術〕拒絶査定不服審判事件〔平成17年02月10日出願公開、特開2005-37867〕について、次のとおり審決する。
結論
本件審判請求は、成り立たない。
理由
一.手続の経緯および本願発明
本願は、2003年9月17日を出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術。」
二.当審の拒絶の理由の概要
当審において平成18年5月18日付けで通知した拒絶の理由の概要は次のとおりのものである。
「理由
(一).この出願は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たしていない。
記
・・・(中略)・・・
8.【請求項1】には、「技術(方法)」と記載されているが、方法の発明であるのか(特許法第2条のどのカテゴリに属する発明であるのか)不明確である。
また、この記載は、特許を受けようとする発明を特定するために必要とする事項を不明確にしている。
・・・(中略)・・・
(二).本願請求項1に係る発明は、下記の理由により、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であることを要件とする特許法第2条に規定する「発明」に該当しないから、特許法第29条第1項柱書の規定により、特許を受けることができない。
記
1.本願請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術(方法)。」
前記事項の、「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化する」についてみると、自然法則以外の社会科学、人文科学の定説(法則)あるいは人為的な取決めを利用する部分には、自然法則を利用するものはない。
また、対語を羅列化するための「自然科学の定説」が具体的に開示されていないので、「自然科学を根拠にして」という記載のみから自然法則を利用するものであるとは認めることができない。
そして、前記社会科学、人文科学の定説を根拠にするもののほか、自然法則を対象とする部分があるとしても、自然法則を当該自然法則と対応する概念を対語として扱うものであり、この概念の領域に移行した対語を操作することはもはや自然法則を利用するものではない。また、自然法則を根拠とした定説は自然法則ではなくて自然法則以外の法則の概念に移行しているはずであり、この定説を根拠として対語を羅列化するのに利用しても自然法則を利用することにはならない。
前記自然法則を根拠とし概念に移行した定説を利用することは、自然法則以外の法則、あるいは人為的な取決めを利用することであり、このような自然法則以外の法則、あるいは人為的な取決めを利用して、前記羅列化の操作をしても、どこにも自然法則を利用したものはなく、結局、請求項1に係る発明は、社会科学、人文科学の定説を根拠にして羅列化する部分にも、自然科学の定説を根拠にして羅列化する部分にも、自然法則を利用したものはなく、全体として自然法則を利用した発明であるとはいえない。
請求人は、請求の理由の、本願発明が特許されるべき理由(a)本願発明の説明1において、2つ目は、本願発明のような自然法則を根拠に対語を羅列化することであり、これは自然法則のみを根拠にしている為、特許法2条1項で定義された発明にあたる旨主張しているが、自然法則を根拠にして羅列化しても、前述のように、自然法則を利用して羅列化するものではないので、この主張は採用できない。
2.前記理由(一)8.〜10.で指摘したように、請求項1に係る発明は、人間が主体となっている態様を排除していないので、全体としてみれば、人間の精神活動を利用したものである。人間の精神活動を利用したものは自然法則を利用したものではない。
よって、請求項1に係る発明は、自然法則を利用したものとはいえず、特許法2条1項で定義された「発明」にあたらない。 」
三.請求人の主張
(1)請求人は、平成18年7月26日付け補正書を提出し、同日付けの意見書において、概略、次のように述べている。
「 (前略)・・・
【意見8】
発送番号043722の拒絶理由書(一)8に関して【請求項1】には、「技術(方法)」と記載されているが、方法の発明であるのか(特許法第2条のどのカテゴリに属する発明であるのか)不明確であるとのことであるが、この発明は教育資材等の発明であり、同時に方法にもなりうる為に「技術(方法)」と記載したものである。不明確とのことであるなら、「技術」と手続補正することはやぶさかではない。
・・・(中略)・・・
【意見10】
発送番号043722の拒絶理由書(一)10に関して【請求項1】には、「記号化した対語だけを用い」「人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化する」とあるが、用いたり、羅列化する主体、あるいは、具体的な機能、手段が不明であるとのことであるが、次ぎにいくつか意見を述べさせていただきます。
一、発送番号043722の拒絶理由書(一)10の拒絶理由は、発送番号043722の拒絶理由書(一)1での拒絶理由とされたとおり、人文科学の定説に普遍的な法則がないとの前提にしている。既に【意見1】等でも述べさせていただいたとおりだが、更に違う側面から述べさせていただく。特許法第二条で、「自然法則を利用した」との定義がある。自然法則とは、「自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものを指す(広辞苑 第五版)」とある。人文科学の範疇でもある心理法則において、自然法則が十分あり得ることを意味している。
よって、発送番号043722の拒絶理由書(一)10に関しては、誤った認識の上での拒絶理由である。
二、用いたり、羅列化する主体、あるいは、具体的な機能、手段が不明であるとのことであるが、【意見4】等で述べたとおりである。また、発送番号043722の拒絶理由書(一)10の拒絶理由での主体として云わんとする意味が不明確である。しかし、発送番号043722の拒絶理由書(二)2において、主体が人間であるとしているので、発送番号043722の拒絶理由書(一)10の拒絶理由での主体は恐らく人間としているということで、以下の意見を述べさせていただきます。
【0002】段落の「理論として証明する術」、【0004】段落の「各思想の内容理解を簡潔にし、一般人にも普段馴染みのある対語だけを用いた為に、難解な各思想に容易に親しめる」、【産業上の利用可能性】【0023】段落の「教育資材」の記載等に着目すれば、人間が主体とは言い切れない筈である。これは人間が、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想に、何らかの一連の法則を学習するための技術(道具)である。それは西尾正左衛門殿が発明した特許第27983号の亀の子たわしと何ら異なることはない技術(道具)である。
【意見11】
発送番号043722の拒絶理由書(二)1、2に関して既に対語を羅列化するということには、以下のように三種類に分類できることを、平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1において、以下のように述べさせていただきました。
平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1「対語を羅列化するということには、三種類に分類できることをご説明し、同時にこの度の本願発明が特許されるべきものであることをご説明いたします。
先ず一つ目は、規範法則を根拠に対語を羅列化することである。因みに学校などでは規範文法として教えている。これは特許法第29条第一項柱書の人間の精神活動そのものとすることは出来ない。なぜなら規範法則を根拠にしているからである。しかし特許法第2条1項の発明の定義には該当しない。なぜなら自然法則を利用していないからである。
二つ目は、この度の本願発明のような自然法則を根拠に対語を羅列化することである。これは自然法則のみを根拠にしている為、特許法第2条1項で定義されるとおり、特許されるべきものである。
三つ目は、規範法則、自然法則のどちらをも根拠とせず、一般に無意味な羅列と言われるものである。これは特許法第29条第一項柱書の人間の精神活動に該当する。なぜなら何かしらの法則を利用しておらず、人の心の働きで羅列されたようなものである。それであるならば人間の精神の根本と言えるからである。
以上のことから、一つ目と三つ目を利用した発明は、特許法第29条第一項柱書により、特許にはならないと言うことであり、二つ目のみを利用した発明は特許法第2条により特許になると言うことである。」
上記(平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号50500599854)(a)本願発明の説明1)のことを踏まえ、発送番号043722の拒絶理由書(二)1、2に関して、以下に意見を述べさせていただきます。
発送番号043722の拒絶理由書(二)1の下段にある「自然法則を根拠にして羅列化しても、前述のように、自然法則を利用して羅列化するものではない」とのことであるが、「自然法則を根拠にして羅列化する」ということは特許法二条の「自然法則を利用した」に該当する。
それは上記(平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1)で説明させていただいたとおり、言語の羅列には三種類あることからである。
また、利用とは「利益になるように物を用いること。役に立つように用いること(広辞苑 第五版)。役立つようにうまく使うこと。また、役に立たせること(大辞泉)。」である。【要約書】の【解決手段】において、「記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を基に、自然科学、社会科学、人文科学の定説で根拠付け、その記号化した対語を羅列する事で、限定的に、そしてコンパクトに理論化を可能とする」とは、つまり「自然科学、社会科学、人文科学の定説(法則)を利用し、その記号化した対語を羅列する事で理論化に役立たせる」ということであるからである。
もっと詳しく云えば、理論化を可能とするという利益のために、自然法則を利用して対語を羅列化することである。用いる言葉が違うだけのことであり、表現方法が違うというだけである。
また、発送番号043722の拒絶理由書(二)2において、「人間が主体となっている態様を排除していないので、全体としてみれば、人間の精神活動を利用したものである」とのことであるが、平成17年4月1日提出の審判請求書(受付番号 50500599854)(a)本願発明の説明 1を踏まえていただきたいのと、先の【意見8】、【意見9】、【意見10】等を読んでいただきたい。
・・・(中略)・・・
【証拠方法】 学術書により証明する。 」
四.当審の判断
A.拒絶の理由(一)の8.について
特許請求項の範囲の請求項1の末尾である「技術」は、(1)〔史記貨殖伝〕物事をたくみに行うわざ。技巧。「−を磨く」、(2)(technique)科学を実地に応じて自然の物事を改変・加工し、人間生活に役立てるわざ。「先端−」〔株式会社岩波書店 広辞苑 第五版〕と定義されていることから、わざ、技芸の意味を有しているが、わざ、技芸は、物又は方法のいずれに属するか特定できない概念である。
これに対し、審判請求人は、【意見8】において、本件発明は教育資材等の発明であり、同時に方法にもなりうる為に「技術(方法)」と記載したものである旨主張している。
しかしながら、「技術」は上述のように物の発明と方法の発明の概念を含むものであるから、請求項1の末尾を「技術(方法)」から「技術」に補正したからといってカテゴリーが明確となるわけではない。
特許法第68条で「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」とされ、特許法第2条第3項では「実施」を物の発明、方法の発明及び物を生産する方法の発明に区分して定義している。これらを考慮すれば、前記物の発明であると同時に方法の発明である発明に特許を付与することは権利の及ぶ範囲を不明確にするものであり、適切ではない。(審査基準第1部第1章2.2.2.1(3)参照)
したがって、本件の特許請求の範囲の請求項1に記載された「技術」に係る発明は、物の発明又は方法の発明でいずれの発明であるか特定できず、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないので、依然として、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。
B.拒絶の理由(二)の1.2.に対して
審判請求人は、【意見10】において、特許法第2条の「自然法則」に関して次の旨主張している。
「自然法則とは、「自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものを指す(広辞苑 第五版)」とある。人文科学の範疇でもある心理法則において、自然法則が十分あり得ることを意味している。」
また、拒絶理由(二)の1.2.に対して、審判請求人は【意見11】において、次の旨主張している。
「対語を羅列化するということには、以下のように三種類に分類でき、一つ目と三つ目を利用した発明は、特許法第29条第一項柱書により、特許にはならないと言うことであり、二つ目のみを利用した発明は特許法第2条により特許になると言うことである。
一つ目は、規範法則を根拠に対語を羅列化することであり、これは特許法第29条第一項柱書の人間の精神活動そのものとすることは出来ない。なぜなら規範法則を根拠にしているからである。しかし特許法第2条1項の発明の定義には該当しない。なぜなら自然法則を利用していないからである。
二つ目は、この度の本願発明のような自然法則を根拠に対語を羅列化することである。これは自然法則のみを根拠にしている為、特許法第2条1項で定義されるとおり、特許されるべきものである。
三つ目は、規範法則、自然法則のどちらをも根拠とせず、一般に無意味な羅列と言われるものである。これは特許法第29条第一項柱書の人間の精神活動に該当する。なぜなら何かしらの法則を利用しておらず、人の心の働きで羅列されたようなものである。それであるならば人間の精神の根本と言えるからである。
【意見11】における主張の骨子は、【意見10】の点をふまえると、次の点にあると認められる。
広義での自然法則には、社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものが含まれるので、この規範法則に属さない社会法則、心理法則等は自然法則であって、この自然法則を根拠に対語を羅列化することは、自然法則のみを根拠にしている為、特許法第2条1項で定義する自然法則を根拠にしているものである。
しかしながら、特許法第2条の「自然法則」は、前記広義での自然法則のことをいっているのではなく、極端にいえば、エネルギー保存の法則、万有引力の法則、熱力学の法則などの自然界の現象に直接関わる法則のことであり(審査基準第2部第1章1.1(1)〜(4)参照)、前記広義、狭義でいえば、狭義での自然界に関する法則である。したがって、社会法則、心理法則、経済の法則など、狭義の自然界に関する法則以外の法則は、特許法第2条の「自然法則」にはあたらない。
また、本願発明は、4つの思想を、世の中に認知されている定説に基づいて対語のみを用いて表現する行為又はその行為の結果得られる表現物につきるが、社会常識からして、表現を行う行為は著作に当たり、表現物は著作物にあたるから、本願発明は、特許法第2条の「発明」というべきものではない。
よって、本願発明は、特許法第2条でいう「自然法則」を利用した「発明」ではないので、拒絶の理由(二)の1.2.の理由は、依然として解消していない。
なお、請求人は、学術書により証明するとして、平成18年7月26日付提出意見書の添付参考書籍として次のものを提出している。
(1. 山田克哉著「宇宙のからくり」 出版社 講談社 1998年6月20日発行
2. 八杉貞雄著「「よくわかる基礎生命科学−生物学の歴史と生命の考え方−」
出版社 サイエンス社 2002年12月10日発行
3. 御領謙、菊地正、江草浩幸 共著「最新認知心理学への招待」
出版社 サイエンス社 1993年7月25日発行)
しかしながら、前記書籍を参照しても、前記当審判断A.B.の判断をくつがえす理由は見いだせない。
五.むすび
したがって、本件出願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないので、拒絶をすべきものである。
また、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり、審決する。
〔審決分類〕P18 .536−WZ(G09C)
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平成19年2月19日訴状提出
知的財産高等裁判所:裁判審議に移行