言語科学的羅列技術研究所: Word Enumeration Science Laboratory

特許裁判の状況


■平成19年02月19日 訴状提出 知的財産裁高等判所裁判審議へ

・事件番号:平成19年(行ケ)第10067号審決取消請求事件

原告 岡本 幸裕
被告 特許庁長官 中嶋 誠

訴状

請求の趣旨
1 被告(特許庁)が不服2005−5670号事件について、平成18年12月27日にした拒絶審決の取消し判決を求める。
2 「訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求める。
請求の原因
1 特許庁における手続の経緯
  原告は、発明の名称を「記号化した対語の羅列により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する方法」とする発明について、平成15年09月17日に特許出願をしたが、起案日平成16年08月09日付の拒絶理由通知書を受け、更に起案日平成17年02月28日付の拒絶査定を受け、また更に起案日平成18年05月18日付の拒絶理由通知を受けたので、同年07月26日、これに対する不服の審判を請求した。
  被告(特許庁)は、上記請求を不服2005−5670号事件として審理をした上、平成18年12月27日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、平成19年02月03日、原告に送達された。
2 審決の理由は、審決謄本記載のとおりであるが、その認定判断には誤りがあり、違法として取り消されるべきである。
3 審決の理由に対する認否
 (1) 「1.手続の経緯及び本願発明」については、認める。
 (2) 「2.当審の拒絶の理由の概要」については、認める。
 (3) 「3.請求人の主張」については、認める。
 (4) 「4.当審の判断」については、以下の一、二の記載項目の点から争う。
 
  一.審決の「四.当審の判断 A.拒絶の理由(一)の8.について」は、原告が平成18年05月18日付起案 拒絶理由通知書の(一)記8の『【請求項1】には、「技術(方法)」と記載されているが、方法の発明であるのか(特許法第2条のどのカテゴリーに属する発明であるのか)不明確である。また、この記載は、特許を受けようとする発明を特定するために必要とする事項を不明確にしている』と、(一)記9の『カテゴリーが方法の発明であるとすると、「人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化する」は、対語に対して定説をどのように用いて羅列化するのかの手順の記載がなく、特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載したものとは認められない。方法の発明であるとすれば、請求項1に係る処理を行う主体が不明である。(人間が行う態様が含まれていることに留意されたい。)』と、(一)記10の『【請求項1】には、「記号化した対語だけを用い」「人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化する」とあるが、用いたり、羅列化する主体、あるいは、具体的な機能、手段が不明である』を受けて、平成18年07月26日付意見書の【意見8】、【意見9】において 『【請求項1】には、「技術(方法)」と記載されているが、方法の発明であるのか(特許法第2条のどのカテゴリーに属する発明であるのか)不明確であるとのことであるが、この発明は教育資材等の発明であり、同時に方法にもなりうる為に「技術(方法)」と記載したものである。不明確とのことであるなら、「技術」と手続補正することはやぶさかではない』とし、同日付手続書において「【請求項1】宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術(方法)」から「【請求項1】宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術」に手続補正をしたものである。
 
  そして、平成18年12月27日認証日の審決謄本「4.当審の判断」において、「技術」の意味を広辞苑 第五版で定義し、物又は方法のいずれに属するか特定できない概念であると断定し、請求項1を「技術(方法)」から「技術」に補正したからとていってカテゴリーが明確ではないとし、更に、特許法第68条、特許法第2条第3項、審査基準第1部第一章2.2.2.1(3)を根拠(又は、参照)として、依然として、特許法第36条第6項第2項第2号の要件を満たしていないとしている。
 
  だが、辞書によれば、「発明」とは(1)物事の正しい道理をしり、明らかにすること、(2)新たに物事を考え出すこと、(3)機械・器具類、あるいは方法・技術などをはじめて考案すること、(4)かしこいこと〔広辞苑 第五版 株式会社岩波書店〕であり、その「(3)機械・器具類、あるいは方法・技術などをはじめて考案すること」を踏まえれば、「技術」という用語も十分に発明に該当する。
  また、「4.当審の判断」において「技術」が「わざ、技芸」の意味を有しているという点で、物又は方法のいずれに属するか特定できない概念とのことであるが、その根拠が不明確であると言わざる終えない。なぜなら、辞書においては「発明」も「物事の正しい道理をしり、明らかにすること」の意味を包有し、それは物又は方法のいずれに属するか特定できない概念であるが、特許法第2条において、また、審査基準第1部第一章2.2.2.1(3)を参照して、発明の属する法律上のカテゴリーをある程度明確にしているに過ぎない。
  即ち、これらの事から、この度の審決においての「技術」の語彙概念は辞書においてだけのことであり、また、特許法第68条、特許法第2条第3項、審査基準第1部第一章2.2.2.1(3)を参照(又は根拠)しても、「技術」という用語が特許法上において明記されておらず、「物又は方法のいずれに属するか特定できない概念」とは断定できる根拠がない。寧ろ、特許法上に明記がない以上は、民法の規定である占有権的考え、また、既得権的考えや、社会的通念、昨今提唱されている優先権的考えに基づいて考えるべきであり、前記記載の広辞苑 第五版の「発明」とは「(3)機械・器具類、あるいは方法・技術などをはじめて考案すること」を踏まえれば、「技術」という用語は『「物又は方法のいずれかに属する概念」であるから、発明に該当する』と解釈するのが妥当であり、既に社会通念となっているとするのが当然である。
  よって、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしているからである。
 
  二.審決の「四.当審の判断 B.拒絶の理由(二)の1.2.に対して」は、特許法第2条に明記されている「自然法則」の被告の解釈が間違っていると言わざる終えず、本願発明は特許法第2条の「発明」というべきものである。
  よって、次の点から争う。
 
  【特許法第2条
  『この法律で「発明」とは、自然法則を利用して技術的思想の創作のうち高度のものをいう。』
  【審査基準第2部第1章1.1(1)〜(4)
『 1.1 「発明」に該当しないものの類型
  以下の類型のものは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないから、「発明」に該当しない。
  (1)自然法則自体
  「発明」は、自然法則を利用したものでなければならないから、エネルギー保存の法則、万有引力の法則などの自然法則自体は、「発明」に該当しない。
  (2)単なる発明であって創作でないもの
  「発明」の要件の一つである創作は、創り出すことであるから、発明者が意識して何らの技術的思想を案出していない天然物(例:鉱石)、自然現象等の単なる発明は「発明」に該当しない。
  しかし、天然物から人為的に単離した化学物質、微生物などは、創作したものであり、「発明」に該当する。
  (3)自然法則に反するもの
  発明を特定するための事項の少なくとも一部に、熱力学第二法則などの自然法則に反する手段(例:いわゆる「永久機関」)があるときは、請求項に係る発明は「発明」に該当しない。
  (4)自然法則を利用していないもの
  請求項に係る発明が、自然法則以外の法則(例えば、経済法則)、人為的な取決め(例えば、ゲームのルールそれ自体)、数学上の公式、人間の精神活動に当たるとき、あるいはこれらのみを利用しているとき(例えば、ビジネスを行う方法それ自体)は、その発明は、自然法則を利用したものとはいえず、「発明」に該当しない。
  例1:コンピュータプログラム言語
  例2:徴収金額のうち十円未満を四捨五入して電気料金あるいはガス料金等を徴収する集金方法。
  発明を特定するための事項に自然法則を利用している部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していないと判断されるときは、その発明は、自然法則を利用していないものとなる。
  例3:原油が高価で清水の安価な地域から清水入りコンテナを船倉内に多数積載して出航し、清水が高価で原油の安価な地域へ輸送し、コンテナの陸揚げ後船倉内に原油を積み込み前記出港地へ帰航するようにしたコンテナ船の運航方法。
  例4:予め任意数の電柱を以てA組とし、同様に同数の電柱によりなるB組、C組、D組等所要数の組をつくり、これらの電柱にそれぞれ同一の拘止具を取付けて広告板を提示し得るようにし、電柱の各組毎に一定期間ずつ順次にそれぞれ異なる複数組の広告板を循回掲示することを特徴とする電柱広告方法。
  
  逆に、発明を特定するための事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断されるときは、その発明は、自然法則を利用したものとなる。
 
  以上のように、どのような場合に、全体として自然法則を利用したものとなるかは、技術の特性を考慮して判断する。
  (留意事項)
  ビジネスを行う方法やゲームを行う方法に関連する発明は、物品、器具、装置、システムなどを利用している部分があっても、全体として自然法則を利用しない場合があるので、慎重に検討する必要がある。
  なお、ビジネスを行う方法やゲームを行う方法という観点ではなく、ビジネス用コンピュータ・ソフトウエアやゲーム用コンピュータ・ソフトウエアという観点から発明すれば、「発明」に該当する可能性がある。 』
 
  上記、特許法第2条、審査基準第2部第1章1.1(1)〜(4)からは、被告側の主張する自然法則が、「極端に言えば」との前置きがあるが、「エネルギー保存の法則、万有引力の法則、熱力学の法則などの自然界の現象に直接関わる法則である(自然界の現象に直接関わる法則のみである)」と断定するものは、何処にも見あたらない。ならば、この場合は社会通念(社会常識)で解釈するのが妥当である。
 
  【自然法則(広辞苑 第5版 株式会社岩波書店)】
  自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものを指す  
  このように、社会通念(社会常識)では、「自然法則」は社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものを指している。
  また、既に前記した【審査基準第2部第1章1.1(1)〜(4)】には、「逆に、発明を特定するための事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断されるときは、その発明は、自然法則を利用したものとなる」と記載されていることを踏まえれば、特許法上での「自然法則」は広義での自然法則と考えるのが妥当である。なぜなら、「逆に、発明を特定するための事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断されるときは、その発明は、自然法則を利用したものとなる」と言うことは、「請求項は自然法則と自然法則以外のものだが、全体としてみれば自然法則だから、自然法則として大丈夫である」と言っているようなものであり、ならば、その事を考慮に入れれば「広義の自然法則は狭義の自然法則とは違うが、当然に自然法則だから、自然法則である」とするのが当然だからである。
 
  また、審決においては「本願発明は、4つの思想を、世の中に認知されている定説に基づいて対語のみを用いて表現する行為又はその行為の結果得られる表現物につきるが、社会常識からして、表現を行う行為は著作に当たり、表現物は著作物にあたるから、本願発明は、特許法第2条の「発明」というべきものではない」とのことだが、本願発明は、特許法第2条の「発明」というべきものである。よって、その件に関しても、次の点から争う。
 
  溝上法律特許事務所 弁護士・弁理士 溝上哲也殿はインターネットのホームページ上で『2 ....先ず、発明とされるためには、「自然法則を利用した技術的創作であること」が必要です』と述べ、例えとして「味の素」を引き合いに出し、単に天然物としてのグルタミン酸塩の発見であれば、特許要件を欠くことになりますが、調味料という商品を製造する過程を技術的に特定して出願されたため、調味料を製造する方法として明治41 年に特許されています、と述べている。
  この「味の素」の例えから考えれば、単に自然法則のみで言語が羅列ができるという法則であれば、特許法の特許要件を欠くことになりますが、自然科学の教育資材、人工知能ソフトウエア等の商品を製造する方法(技術)として、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する過程を技術的に特定して出願されたため、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の理論化する方法(技術)として特許法第2条によって特許されるものであるからであるとなる。
  よって、矛盾を見出すことがなく、本願発明は特許法第2条の「発明」というべきものであるからである。
 
  なお、審決においては『本願発明は4つの思想を、世の中に認知されている定説に基づいて対語のみを用いて表現する行為又はその行為の結果得られる表現物につきるが、社会常識からして、表現を行う行為は著作に当たり、表現物は著作物にあたるから、本願発明は、特許法第2条の「発明」というべきではない』とのことだが、前記の「味の素」の例えの通りであるからして、本願発明は、特許法第2条の「発明」というべきである。
  また、本願発明の明細書の段落【0001】から【0006】で記載されたとおり、言語の羅列は次ぎの三種類の形態に分類できる。
 
  1.明細書【0003】段落
  先ず一つ目は、規範法則を利用して言語を羅列化することである。因みに学校などでは規範文法として教えている。
  2.明細書【0004】段落
  二つ目は、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)言語を羅列化することである。
  3.明細書【0005】段落
  三つ目は、規範法則、自然法則のどちらをも根拠とせず、一般に無意味な言語の羅列と言われるものである。なぜなら、何かしらの法則を利用しておらず、人の心の働きや人間の精神活動だけで羅列されたようなものであるからである。
 
  以上のように、言語の羅列は上記の三種類の形態に分類できる。審決においての「社会常識からして、表現を行う行為は著作に当たり、表現物は著作物にあたる」という言語の羅列は、上記「1.明細書【0003】段落」、3.明細書【0005】段落の規範法則、人間の精神活動を用いたものである。なぜなら、著作権法第2条一項の規定する「思想又は感情を創作的に表現したもので」あって、特許法第2条「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」ではないからである。詰まるところ、「自然法則を利用した技術的思想」ではないからである。
  よって、2.明細書【0004】段落の自然法則を用いた本願発明は、特許法第2条に記載する「自然法則を利用した技術的創作のうち高度のもの」であって、特許法第2条によって特許されるものであるからである。
 
  また更に、審決においては『前記書籍(1.山田克哉著「宇宙のからくり」2.八杉貞雄著「よくわかる 基礎生命科学 −生物学の歴史と生命の考え方−」3.御領謙、菊池正、江草浩幸共著「最新認知心理学への招待」)を参照しても、前記当審判断A.B.の判断をくつがえす理由は見あたらない」とのことだが、平成18年07月26日付意見書で述べたとおりである。
  なお、人工知能に関しては比較的新しい分野であるため、指針となる資料が少ない。平成18年07月26日付意見書に添付した資料のみでは覆らないとのことであれば、人工知能の参考資料として、特許庁がホームページ上に掲載する「人工知能」と、今後の知的財産のあり方の参考資料として、首相官邸がホームページ上に掲載している「知的財産戦略大綱」を添付書類として提出する。
 
 (5) 「5.むすび」については、本願発明は特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たし、また、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであり、速やかに特許法第66条(特許権の設定の登録)の権利を与えられるべきものであるから、争う。

註:訴状に関しては、平成19年03月06日、平成19年05月16日付訴状訂正申立書により、訂正箇所あり。
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平成19年03月08日(付) 答弁書

原告 岡本 幸裕
被告 特許庁長官 中嶋 誠
被告指定代理人  内山 進

上記当事者間の不服2005-5670の審決取消請求事件について、被告は次のとおり答弁する。
第1 本案前の答弁
1 答弁の趣旨
 「原告の請求の趣旨2記載の訴えを却下する」との判決を求める。
 「訴訟費用は、原告の負担とする」との判決を求める。
2 答弁の理由
 特許法第178条第1項は、「審決に対する訴え及び審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とする。」規定し、同条第6項において「審判を請求することができる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ、提起することができない。」と規定している。そうすると、同条第1項に係る訴えは、当該審決の違法性を争うものでなければならないところ、本件審決は、「五.むすび」に記載のとおり、「本件出願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないので、拒絶すべきものである。また、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。」として、「本件審判の請求は成り立たない。」としたものであるのに対し、原告の本件訴訟における上記請求は、本願発明を特許とすべきであるとの審決を求めるものであって、本件審決に対するものとはいえず、その請求は、特許法第178条第1項において規定された審決等に対する訴えとはいえない。
 したがって、本件訴えの「請求の趣旨」の「2 また同時に、不服2005-5670号事件についての特許審決を求める。」については、不適法として却下すべきである。
第2 本案についての答弁
1 答弁の趣旨
 「原告の請求をいずれも棄却する。」との判決を求める。
 「訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求める。
2 答弁の理由
 本件審決に、原告主張の違法はない。
 詳細な理由は、追って補充する。

 以上
 なお、本件を第1回口頭弁論期日前に弁論準備手続又は書面による準備手続に付することについて異議はない。
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平成19年03月28日(付) 準備書面提出 
 
原告 岡本 幸裕    
被告 特許庁長官 中嶋 誠

準備書面
頭書事件について、原告は、次のとおり弁論を準備する。
第1 審決の理由に対する認否
 審決の理由に対する認否に関しては、既に提出済である平成19年02月19日付の訴状に記載した通りである。
第2 原告の主張
 既に提出済である平成19年02月19日付の訴状に付随して、次の主張をする。
一.言語、文字、記号は人工の道具である。
  「言語とは、1.人間が音声または文字を用いて思想・感情・意志など伝達したり、理解したりするために用いる記号体系。また、それを用いる行為。ことば。 2.ある特定の集団が用いる個別の言語体系。日本語・英語の類。3.ソシュールの用語で、ラングの訳語。(広辞苑 第五版 株式会社岩波書店)」である
 「文字とは、1.もんじ。字。2.ことば。文言。3.字の音。4.仮名であらわされる文字の数。すなわち音節数。5.学問。文章。6.(畿内で)銭の面の文字のある方。転じて、銭。(広辞苑 第五版 株式会社岩波書店)」である。
  「記号とは、1.一定の事柄を指し示すために用いる知覚の対象物。言語・文字などがその代表的なもので、交通信号のようなものから高度の象徴まで含まれ る。また、文字に対して特に符号類をいう。2.ソシュールによれば、能記または記号表現(シニフィアン)と所記または記号内容(シニフィエ)の両面を備え た言語単位。(広辞苑 第五版 株式会社岩波書店)」である。
 よって、特許権、実用新案、著作権等の知的財産権として保護すべき対象である。
二.記号活動は物理的出来事である。
 専門家の間では、記号活動は物理的出来事として再現可能なものであるという事は常識である。
 例として、千葉大学文学部教授 文学博士 御領 謙氏、筑波大学心理学系助教授 菊地 正氏、江草 浩幸氏は、共著「最新 認知心理学への招待 心の働きとしくみを探る」の中(22頁・23頁)で、次のように述べている。
  「〜情報処理過程とは何らかの事象を記号化し、その結果生まれた記号を操作し、変換する過程であり、コンピュータによる情報処理はまさに記号処理過程であ る。ところで、コンピュータの誕生の基礎となった理論に、万能機能の理論がある。万能理論とは理論的に考えうるありとあらゆる記号処理の可能な理論的、抽 象的な機械である。たとえば、チューリング(Turing,A.)の提案したチューリング・マシン(Turing machine)が有名である。現代のコンピュータは万能機能に他ならない。ひるがえって人間について考えてみると、言語行動はいうに及ばず、身振り、手 振り、表情による伝達など、われわれの行動を支えている心的活動はまさにある種の記号活動に他ならない。万能機能はすべての記号活動を実行しうるのである から、人間の活動を記号化できればそれらをすべて実行しうるわけである。このことは、心的活動を記号活動として捉えうるかぎりは、必ずそれをコンピュータ 上で、物理的できごととして再現できることが理論的に保証される可能性を示唆している〜」と述べている。
 よって、特許権、実用新案、著作権等の知的財産権として保護すべき対象である。
三.自然法則による言語羅列が可能なことは、被告も認めている。
 平成16年08月09日起案日の拒絶査定において、特許庁審査官 水野 恵雄 殿は次のように述べている。
  「〜宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然法則、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、対語を羅列化することは、人間の精神活動そのも のであり、〜」と述べている。精神活動そのものであるかどうかは疑わしく、原告にとっては異論があるが、「自然法則、社会科学、人文科学の定説を根拠にし て、対語を羅列化すること」と明言している。
 よって、自然法則による言語羅列は可能である。

 以上
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平成19年04月04日(付) 準備書面(第1回)提出

原告 岡本 幸裕
被告 特許庁長官 中嶋 誠
被告指定代理人 吉岡 浩
被告指定代理人 井関 守三

準備書面(第1回)

上記当事者間の不服2005-5670号の審決取消請求事件について、被告は次のとおり弁論を準備する。
第1 訴状に対する認否
1 訴状中の請求の原因「1 特許庁における手続の経緯」について、手続の日付に誤りがある。拒絶査定の日付は平成17年02月28日であり、拒絶査定不服審判の請求日は平成17年4月1である。上記手続の日付を修正したものであれば、訴状中の請求原因「1 特許庁における手続の経緯」については、認める。
2 訴状中の請求の原因「2 」は争う。
3 訴状中の請求原因「3 審決の理由に対する認否」について、原告が争うとしている点は争う。
第2 被告は、訴状における審決の取消事由に対して、次のとおり反論する。
 1 取消事由(四.当審の判断 A.拒絶の理由(一)の8.について)に対して
 〔原告主張の概要〕
審決においての「技術」の語彙概念は辞書においてだけのことであり、また、特許法第68条、特許法第2条第3項、審査基準第1部第一章2.2.2.1(3)を参照(又は根拠)しても、「技術」という用語が特許法上において明記されておらず、「物又は方法のいずれに属するか特定できない概念」とは断定できる根拠がない。寧ろ、特許法上に明記がない以上は、民法の規定である占有権的考え、また、既得権的考えや、社会的通念、昨今提唱されている優先権的考えに基づいて考えるべきであり、前記記載の広辞苑 第五版の「発明」とは「(3)機械・器具類、あるいは方法・技術をはじめて考案すること」を踏まえれば、「技術」という用語は『「物又は方法のいずれに属する概念」であるから、発明に該当する』と解釈するのが妥当であり、既に社会通念となっているとするのが当然である。
 〔被告の反論〕
 審決では、「技術」が発明の概念に該当しないと言っているのではない。また、審決は、「技術」が物又は方法のいずれの概念にも属さないと言っているわけでもない。審決では、「技術」という用語は、「わざ、技芸」の意味を有しているが、「わざ、技芸」は、物又は方法のいずれに属するか特定できない概念であると言っているのである。
 これに対し、原告は平成18年7月26日付け意見書の【意見8】において、本件発明は教育資材等の発明であり、同時に方法にもなりうる為に「技術(方法)」と記載したものである旨主張し、更に、【意見10】において、「【0002】段落の「理論として証明する術」、【0004】段落の「各思想の内容理解を簡潔にし、一般人にも普段馴染みのある対語だけを用いた為に、難解な各思想に容易に親しめる」、【産業上の利用可能性】【0023】段落の「教育資材」の記載等に着目すれば、人間が主体とは言い切れない筈である。これは人間が、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想に、何らかの一連の法則を学習するための技術(道具)である。それは西尾正左衛門殿が発明した特許第27983号の亀の子たわしと何ら異なることはない技術(道具)である。」と主張している。
 「技術」という用語は、一般に物又は方法のいずれに属するか特定できない概念であり、本願の特許請求の範囲の記載は、全体として「物の発明」又は「方法の発明」と断定できるほど明確なものではなく、また、原告の意見書の主張を参酌すれば、本願の特許請求の範囲に記載された「技術」とは、物の発明と方法の発明の両方の概念を含むものと解するのが妥当である。
 特許法第68条で「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」とされ、特許法第2条第3項では「実施」を物の発明、方法の発明及び物を生産する方法の発明に区分して定義している。これらを考慮すれば、前記物の発明であると同時に方法の発明である発明に特許を付与することは権利の及ぶ範囲を不明確にするものであり、適切ではない。
 したがって、本件の特許請求の範囲の請求項1に記載された「技術」に係る発明は物の発明又は方法の発明のいずれの発明であるか特定できず、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないので、特許法第36条第6項第2項の要件を満たしていないとした審決の判断に誤りはなく、上記原告の主張は失当である。
 2 取消事由(四.当審の判断 A.拒絶の理由(二)の1.2.について)に対して
 〔原告主張の概要〕
(1)原告は、審査基準第2部第1章1.1(1)〜(4)の中の「逆に、発明を特定するための事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断されるときは、その発明は、自然法則を利用したものとなる。」という記載を根拠にして、発明が自然法則を利用したものとなると言うことは、「請求項は自然法則と自然法則以外のものだが、全体としてみれば自然法則だから、自然法則として大丈夫である」と言っているようなものとの解釈論を展開している。
(2)自然法則とは、
 「自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものを指す」との広辞苑 第5版 株式会社岩波書店による定義を引用し、自然法則とは、社会通念(社会常識)では自然法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものを指している。
(3)言語の羅列は、三形態に分類できるとして、一つは、規範法則を利用しての言語を羅列化、二つ目は、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)言語を羅列化、三つ目は、規範法則、自然法則のどちらをも根拠とせず、一般に無意味な言語の羅列化に分類し、審決が著作物に当たるというのは、一つ目と三つ目の羅列化であり、二つ目の羅列化は、特許法第2条に記載する「自然法則を利用した技術的創作のうち高度のもの」に当たり、特許されるべきものである。
 〔被告の反論〕
 原告は、訴状の6項19行から22行に「上記、特許法第2条、審査基準第2部第1章1.1(1)〜(4)からは、被告側の主張する自然法則が、「極端に言えば」との前置きがあるが、「エネルギー保存の法則、万有引力の法則、熱力学の法則などの自然界の現象に直接関わる法則である(自然界の現象に直接関わる法則のみである)」と断定するものは、何処にも見あたらない。」と記載しているが、審決では「特許法第2条の「自然法則」は、前記広義での自然法則を言っているのではなく、端的に言えば、エネルギー保存の法則、万有引力の法則、熱力学の法則などの自然界の現象に直接関わる法則のことであり(審査基準第2部第1章1.1(1)〜(4)参照)、前記広義、狭義でいえば、狭義での自然界に関する法則である。」と記載しているのであって、「極端に言えば」という前置きは使っていない。
(1)特許法第2条、審査基準第2部第1章1.1(1)〜(4)には、自然法則の利用について、〔原告主張の概要〕で引用する箇所の他に、「発明を特定するための事項に自然法則を利用している部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していないと判断されるときは、その発明は、自然法則を利用していないものとなる。」との記載もある。
 これら両方の記載を併せて考えると、発明とは通常発明を特定する事項が複数寄り集まって構成されているものであるが、個々の発明を特定する事項に自然法則が利用されている部分があってもなくても、それに基づいて即座に自然法則を利用しているか否かを判断するのではなく、請求項に係る発明を全体として捉えて自然法則を利用しているか否かを判断するのではなく、請求項に係る発明を全体として捉えて自然法則を利用しているか否かを判断するべきであることを説示するものである。したがって、審査基準第2部第1章1.1(1)〜(4)が言わんとすることは、原告が主張するような、請求項に係る発明が法則と自然法則以外のもので構成されているときに、全体としてみれば自然法則を利用しているという意味ではなく、原告の主張は失当である。
(2)社会常識は、ともかく、特許法第2条の「自然法則」は、広義での自然法則のことをいっているのではなく、端的にいえば、エネルギー保存の法則、万有引力の法則、熱力学の法則などの自然界の現象に直接関わる法則のことであり、広義、狭義でいえば、狭義での自然界に関する法則である。したがって、社会法則、心理法則、経済の法則など、狭義の自然界に関する法則以外の法則は、特許法第2条の「自然法則」にはあたらない。
(3)原告は、本願発明は、対語を自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠としているから、自然法則を利用していると主張している。しかしながら、自然法則、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠としていることと自然法則を利用していることとは同義ではない。
 審決2頁33行〜3頁2行(審決原本においての頁:2頁33行〜3頁2行)では、「自然法則を根拠とした定説は自然法則ではなくて自然法則以外の法則の概念に移行しているはずであり、この定説を根拠として対語を羅列するのに利用しても自然法則を利用することにはならない。前記自然法則を根拠とした概念に移行した定説を利用することは、自然法則以外の法則、あるいは人為的な取決めを利用して、前記羅列化の操作をしても、どこにも自然法則を利用したものはなく」としている。
 つまり、自然法則を根拠とした定説は、自然法則そのものではなく、自然法則に対する人間の知見が加わった概念と考えられるから、自然法則を根拠とした定説を用いるからといって自然法則を利用することにはならない。
 また、上記で議論したように、自然法則を根拠とした定説は、自然法則ではなく、自然法則以外の法則の概念に移行しているものであるから、自然法則を根拠とした定説を利用して対語を羅列化することは自然法則を利用した対語の羅列化とはいえず、原告の主張する二つ目の羅列化についても社会常識からして、表現を行う行為は著作に当たり、表現物は著作物にあたるとみるのが至当である。
 したがって、本件の特許請求の範囲に記載された「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術。」は、特許法でいう自然法則を利用した発明とは言えないものであり、原告の主張は失当である。
 3.結論
 以上、原告の主張する取消理由はいずれも失当であり、審決の認定・判定に原告の主張するような誤りはない。
 以上
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平成19年04月12日 午後3時30分 開廷

弁論準備手続(第1回口頭弁論)
場所 知的財産高等裁判所 第2部書記官室
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平成19年04月25日 準備書面(第2回)提出

原告 岡本 幸裕
被告 特許庁長官 中嶋 誠
被告指定代理人 吉岡 浩
被告指定代理人 井関 守三

準備書面(第2回)

不服2005-5670号の審決取消請求事件について、被告は次のとおり弁論を準備する。
〔被告の認否〕
 最終明細書HP:技術論文は、本件を紹介した文書であるが、本件最終明細書(特許庁提出書面)とは下記の点で異なっており、本件特許出願の最終明細書ではない。
1.最終明細書(技術論文)に関して、図1、図2は、最終明細書(特許庁提出書面)の図面では図1-1、図1-2、図1-3、図1-4、図1-5、図1-6、図2-1、図2-2、図2-3、図2-4、図2-5、図2-6となっている。
2.特許出願の最終明細書の段落番号【0012】【0032】【0033】【0034】【0045】において、図面番号の付け方は最終明細書の図面番号と異なっている。

 なお、本件出願の特許請求の範囲および明細書については、平成18年07月26日付手続補正書により補正され、その後に特許請求の範囲および明細書の補正はない。また、図面については、平成16年03月02日付手続補正書により補正され、その後に図面の補正はない。よって、被告は本件出願の最終明細書、特許請求の範囲および図面の内容を明らかにするために平成18年07月26日付手続補正書を乙第1号証として、平成16年03月02付手続補正書を乙第2号証として提出する。

註:図面番号に関して、HP掲載の便宜上変更したものであり、内容に関しての違いはない。
  乙第1号証、乙第2号証に関しても本HPの技術論文(特許出願論文)との内容的違いはない。
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平成19年05月16日 準備書面提出

原 告 岡本 幸裕
被 告 特許庁長官 
                                             
準備書面

事件について、原告は、次のとおり弁論を準備する。
 第1 審決の理由に対する認否
 審決の理由に対する認否に関しては、既に提出済みである平成19年02月19日付の訴状に記載した通りである。
 第2 原告の主張
 既に提出済みである平成19年02月19日付の訴状、平成19年03月28日付の準備書面に付随して、次の主張をする。
一.被告の平成19年04月04日付準備書面(第1回)に関して、原告は下記のように反論をする。
1.被告は、平成19年04月04日付準備書面(第1回)の「1 取消事由(四.当審の判断 A.拒絶の理由(一)の8.について)に対して」において、『審決では、「技術」が発明の概念に該当しないと言っているのではない。』(〔被告の反論〕の箇所)と主張しているが、これはつまり、審決で述べられていることとある意味で矛盾している。
 何故なら、被告は審決において「技術」は、物の発明と方法の発明の概念を含むものとしてカテゴリーが明確でない旨を述べている。その為、特許法第36条第6項第2項の要件を満たしえないので発明に該当しない旨を述べているからである。
 これはつまり、原告にとっては、被告が詭弁を弄していると言わざる終えない。もし被告が、平成19年04月04日付準備書面(第1回)の「1 取消事由(四.当審の判断 A.拒絶の理由(一)の8.について」において、『審決では、「技術」が発明の概念に該当しないと言っているのではない。』と述べていることが正しいのであれば、被告は即ち『「技術」が発明の概念に該当し、特許法第36条第4項及び第6項の要件を満たしている。』と言っていることであり、原告にとっては何ら問題はない。
 また更に被告は、『審決では、「技術」が物又は方法のいずれの概念にも属さないと言っているわけでもない。審決では、「技術」という用語は、「わざ、技芸」の意味を有しているが、「わざ、技芸」は、物又は方法のいずれに属するか特定できない概念であると言っているのである。』(〔被告の反論〕の箇所)と主張しているが、これもつまり、結論から先に言えば、先と同じく被告が詭弁を弄していると言わざる終えない。
 何故なら、原告は「わざ、技芸」という用語を用いたのではないのであるから、被告の主張は矛盾であり、詭弁と言わざる終えない。
 よって、上記のことから、特許法第36条第4項及び第6項を満たしていることを主張する。
2.被告は、平成19年04月04日付準備書面(第1回)の「2 取消事由(四.当審の判断 A.拒絶の理由(二)の8.について)に対して」の〔被告の反論〕の箇所で、被告は『「極端に言えば」という前置きは使っていない』とのことだが、審決を確認したところ被告の主張の通りであった。訴状においての誤字であることを認める。
3.平成19年04月04日付準備書面(第1回)の「2取消事由(四.当審の判断A.拒絶の理由(二)の8.について)に対して」の〔被告の反論〕(1)に対して
 特許法上での「自然法則」が狭義か、広義であるのかを論ずる点で、【審査基準第2部第1章1.1(1)〜(4)】に記載のある「逆に、発明を特定するための事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断されるときは、その発明は、自然法則を利用したものとなる」の記述を引用した事を先ず主張する。
 なお、この度の被告の平成19年04月04日付準備書面(第1回)の「2 取消事由(四.当審の判断 A.拒絶の理由(二)の8.について)に対して」の〔被告の反論〕(1)からも、特許法上での「自然法則」が狭義に限る根拠が示されておらず、原告にとっては納得がいかない。
 したがって、既に訴状においても主張してあるが、改めて特許法上での「自然法則」が広義である旨を主張する。
4.平成19年04月04日付準備書面(第1回)の「2取消事由(四.当審の判断A.拒絶の理由(二)の8.について)に対して」の〔被告の反論〕(2)に対して
 この度の被告の平成19年04月04日付準備書面(第1回)の「2 取消事由(四.当審の判断 A.拒絶の理由(二)の8.について)に対して」の〔被告の反論〕(2)からも、特許法上の「自然法則」が狭義に限る旨の根拠の記載は何処にもない。ただただ被告は特許法上の「自然法則」が狭義あると主張しているのみであり、根拠がないのであれば社会常識においての「自然法則」の定義で考えるのが当然であるから、原告にとっては納得がいかない。
 したがって、既に訴状においても主張してあるが、改めて特許法上での「自然法則」が広義である旨を主張する。
5.平成19年04月04日付準備書面(第1回)の「2取消事由(四.当審の判断A.拒絶の理由(二)の8.について)に対して」の〔被告の反論〕(3)に対して
 被告が述べていることは、「自然法則」と「自然法則の定説」とは同義ではないとのことだ。しかし、未確認の不確かな「自然法則」が存在している現状において、「自然法則」と「自然法則の定説」を同義としないのはおかしい。ある「自然法則の定説」に対して、根拠ある反証がない以上は、そのある「自然法則の定説」は成立しており、「自然法則」であると断定して過言はない。
 寧ろ、同義か同義でないかは、科学に携わる者の側の倫理の問題であろうかと思う。科学技術を行政指導にしている庁の言葉としては、ある一部の個人の倫理観に偏った発言(記載)であり、中立であらねばならない行政庁の立場(根拠条文 憲法第15条)にあっては、倫理的に問題があるのではないかと思われる。速やかに発言(記載)を撤回をしていただけることを切望する。
 したがって、根拠ある反証がない以上は「自然法則の定説」は「自然法則」であるからして、既に訴状においても主張してあるが、本願発明は紛れもなく特許法でいう自然法則を利用した発明である。

 以上
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平成19年06月07日 午後3時30分 開廷

弁論準備手続(第2回口頭弁論)
場所 知的財産高等裁判所 第2部書記官室
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平成19年06月14日 午後01時10分 判決言渡し
判決  

平成19年(行ケ)第10067号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成19年6月7日
判決
原告                      岡本 幸裕
被告 特許庁長官   中嶋 誠
    指定代理人 吉岡 浩 (同) 井関  守三 (同) 山本 章裕 (同) 内山 進

主文
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
 第1 請求
 特許庁が不服2005-5670号事件について平成18年12月27日にした審決を取り消す。
 第2 事件の概要
 本件は、原告が、後記特許出願をしたところ、拒絶査定を受けたので、これを不服として審判請求をしたが、特許庁から請求不成立の審決を受けたので、その取消しを求めた事案である。
 第3 当事者の主張
 1 請求の原因
 (1) 特許庁における手続の経緯
 原告は、平成15年09月17日、名称を「記号化した対語の羅列化により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する方法」とする発明について特許出願をし(以下「本願」という。請求項の数1。特願2003-363862号)、その後何度かにわたり明細書等の補正をしたが、平成17年02月28日拒絶査定を受けた。
 そこで原告は、平成17年04月01日付けで不服の審判請求を行ったので、特許庁は同請求を不服2005-5670号事件として審理し、その中で原告は、平成18年07月26日付けで明細書の補正をした(発明の名称を「記号化した対語の羅列化により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する技術」と変更された。)ものの、特許庁は、平成18年12月27日、「本件審判の請求は、成り立たない」旨の審決をし、その謄本は平成19年02月03日原告に送達された。
 (2) 発明の内容
 平成18年07月26日付け補正後の特許請求の範囲は、その内容は次のとおりである(以下「本願発明」という。)
 「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術。」
 (3) 審決の内容
 審決の内容は、別添審決写しのとおりである。その理由の要点は、@本件特許請求の範囲「請求項1」に記載された「技術」に係る発明は、物の発明又は方法の発明のいずれの発明であるか特定できず、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないので、本願は特許法第36条6項2号の要件を満たしていない、A本願発明は、特許法第2条でいう「自然法則」を利用した「発明」ではない、というものである。
 (4) 審決の取消事由
 しかしながら、審決の認定判断には、次のとおり誤りがあるから、違法として取り消されるべきである。
 ア 取消事由1(特許法第36条6項2号の要件を満たしていないとの判断の誤り)
 辞書によれば、「発明」とは(1)物事の正しい道理をしり、明らかにすること、(2)新たに物事を考え出すこと、(3)機械・器具類、あるいは方法・技術などをはじめて考案すること、(4)かしこいこと〔広辞苑 第五版 2161頁〕であり、その「(3)機械・器具類、あるいは方法・技術などをはじめて考案すること」との記載を踏まえれば、「技術」という用語も十分に発明に該当する。
 また、審決は、「技術」が「わざ、技芸」の意味を有しているという点で、物又は方法のいずれに属するか特定できない概念であるとの判断をしているが、その根拠が不明確である。なぜなら、辞書においては、上記のとおり、「発明」も「物事の正しい道理を知り、明らかにすること」の意味を包有し、それは物又は方法のいずれに属するか特定できない概念であって、物であるか方法であるかは、発明の属する法律上のカテゴリーをある程度明確にしているにすぎないからである。
 特許法第68条、同法第2条第3項、審査基準第1部第一章2.2.2.1(3)を参照しても、「技術」という用語は、特許法上において明記されていないから、「物又は方法のいずれに属するか特定できない概念」とは断定できる根拠がない。むしろ、特許法上に明記がない以上は、民法の規定である占有権的考え、既得権的考え、社会的通念、優先権的考えに基づいて考えるべきであり、「技術」という用語は「『物又は方法のいずれかに属する概念』であるから、発明に該当する」と解釈するのが妥当であり、既に社会通念となっている。
 したがって、本願は、特許法第36条6項2号の要件を満たしている。
 イ 取消事由2(特許法第2条でいう「自然法則」を利用した発明ではないとの判断の誤り)
 (ア) 審決は、「特許法第2条の『自然法則』は、・・・端的に言えば、エネルギー保存の法則、万有引力の法則、熱力学の法則などの自然界の現象に直接関わる法則のことであり(審査基準第2部第1章1.1(4)参照」と判断している。
 しかし、「自然法則」は、社会通念では、「自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものを指す。」(広辞苑[第五版]1175頁)とされている。
 特許法の審査基準第2部第1章1.1(4)(甲7)には、「・・・逆に、発明を特定するための事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断されるときは、その発明は、自然法則を利用したものとなる。」と記載されている。この記載は、「請求項は自然法則と自然法則以外のものだが、全体としてみれば自然法則だから、自然法則として大丈夫である」と言っているようなものであるから、特許法上での「自然法則」は、上記の広義の自然法則、すなわち、社会法則、心理法則等のうち規範法則に属さないものと考えるのが妥当である。
 (イ) 審決は、「また、本願発明は、4つの思想を、世の中に認知されている定説に基づいて対語のみを用いて表現する行為又はその行為の結果得られる表現物につきるが、社会常識からして、表現を行う行為は著作に当たり、表現物は著作物にあたるから、本願発明は、特許法第2条の『発明』というべきものではない。」と判断している。
 単に自然法則のみで言語が羅列ができるという法則であれば、特許法の特許要件を欠くことになるが、本願発明は、自然科学の教材資料、人工知能ソフトウエア等の商品を製造する方法(技術)として、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する課程を技術的に特定して出願したものであるから、特許法第2条の「発明」に当たるというべきである。
 また、言語の羅列は次の3種類の形態に分類できる。すなわち、@「先ず一つ目は、規範法則を利用して言語を羅列化することである。因みに学校などでは規範文法として教えている。」、A「二つ目は、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)言語を羅列化することである。」、B「三つ目は、規範法則、自然法則のどちらをも根拠とせず、一般に無意味な言語の羅列と言われるものである。なぜなら、何かしらの法則を利用しておらず、人の心の働きや人間の精神活動だけで羅列されたようなものであるからである。」。審決が「社会常識からして、表現を行う行為は著作に当たり、表現物は著作物にあたる」という言語の羅列は、上記@、Bである。これに対し、上記Aは、特許法第2条に規定する「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」であって、同条の「発明」に当たる。
 (ウ) 言語とは、「1.人間が音声または文字を用いて思想・感情・意志など伝達したり、理解したりするために用いる記号体系。また、それを用いる行為。ことば。2.ある特定の集団が用いる個別の言語体系。日本語・英語の類。3.ソシュールの用語で、ラングの訳語。(広辞苑 第五版 株式会社岩波書店)」であり、文字とは「(1).もんじ。字。(2).ことば。文言。(3).字の音。(4).仮名であらわされる文字の数。すなわち音節数。(5).学問。文章。(6).(畿内で)銭の面の文字のある方。転じて、銭。(広辞苑 第五版 株式会社岩波書店)」であり、記号とは「(1).一定の事柄を指し示すために用いる知覚の対象物。言語・文字などがその代表的なもので、交通信号のようなものから高度の象徴まで含まれる。また、文字に対して特に符号類をいう。(2).ソシュールによれば、能記または記号表現(シニフィアン)と所記または記号内容(シニフィエ)の両面を備えた言語単位。(広辞苑 第五版 株式会社岩波書店)」である。したがって、言語、文字、記号は、人工の道具であるから、特許権、実用新案権、著作権等の知的財産権として保護すべき対象である。
 専門家の間では、記号活動は物理的出来事として再現可能なものであるという事は常識である。
 例として、御領 謙氏、筑波大学心理学系助教授 菊地 正氏、江草 浩幸氏は、共著「最新 認知心理学への招待 心の働きとしくみを探る」では、「情報処理過程とは何らかの事象を記号化し、その結果生まれた記号を操作し、変換する過程であり、コンピュータによる情報処理はまさに記号処理過程である。ところで、コンピュータの誕生の基礎となった理論に、万能機能の理論がある。万能理論とは理論的に考えうるありとあらゆる記号処理の可能な理論的、抽象的な機械である。たとえば、チューリング(Turing,A.)の提案したチューリング・マシン(Turing machine)が有名である。現代のコンピュータは万能機能に他ならない。ひるがえって人間について考えてみると、言語行動はいうに及ばず、身振り、手振り、表情による伝達など、われわれの行動を支えている心的活動はまさにある種の記号活動に他ならない。万能機能はすべての記号活動を実行しうるのであるから、人間の活動を記号化できればそれらをすべて実行しうるわけである。このことは、心的活動を記号活動として捉えうるかぎりは、必ずそれをコンピュータ上で、物理的できごととして再現できることが理論的に保証される可能性を示唆している。」と述べられている。したがって、記号活動は、特許権、実用新案権、著作権等の知的財産権として保護すべき対象である。
 平成16年08月09日起案の拒絶理由通知書において、特許庁審査官は「〜宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然法則、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、対語を羅列化することは、人間の精神活動そのものであり」と述べているから、自然法則による言語羅列が可能であることは、被告も認めている。
 (エ) 以上のとおり、本願発明は特許法第2条の「発明」に当たる。
 2 請求原因に対する認否
 請求原因(1)ないし(3)の各事実は認めるが、(4)は争う。
 3 被告の反論
 (1) 取消事由1に対して
 審決は、「技術」が発明の概念に該当しないと言っているのではない。また、審決は、「技術」が物又は方法のいずれの概念にも属さないと言っているわけでもない。審決では、「技術」という用語は、「わざ、技芸」の意味を有しているが、「わざ、技芸」は、物又は方法のいずれに属するか特定できない概念であると言っているのである。
 原告は平成18年7月26日付け意見書の【意見8】において、本件発明は「教育資材等の発明であり、同時に方法にもなりうる為に『技術(方法)』と記載したものである。」と主張し、【意見10】において、「【0002】段落の『理論として証明する術』、【0004】段落の『各思想の内容理解を簡潔にし、一般人にも普段馴染みのある対語だけを用いた為に、難解な各思想に容易に親しめる』、【産業上の利用可能性】【0023】段落の『教育資材』の記載等に着目すれば、人間が主体とは言い切れない筈である。これは人間が、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想に、何らかの一連の法則を学習するための技術(道具)である。それは西尾正左衛門殿が発明した特許第27983号の亀の子たわしと何ら異なることはない技術(道具)である。」と主張している。
 「技術」という用語は、一般に物又は方法のいずれに属するか特定できない概念であり、本願の特許請求の範囲の記載は、全体として「物の発明」又は「方法の発明」と断定できるほど明確なものではなく、また、原告の意見書の上記主張を参酌すれば、本願の特許請求の範囲に記載された「技術」とは、物の発明と方法の発明の両方の概念を含むものと解するのが妥当である。
 特許法第68条で「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」とされ、特許法第2条第3項では「実施」を物の発明、方法の発明及び物を生産する方法の発明に区分して定義している。これらを考慮すれば、「物の発明」であると同時に「方法の発明」である発明に特許を付与することは、権利の及ぶ範囲を不明確にするものであり、適切ではない。
 したがって、本願発明は、物の発明又は方法の発明のいずれの発明であるか特定できず、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないので、特許法第36条第6項第2項の要件を満たしていないとした審決の判断に誤りはない。
 (2) 取消事由2に対して
 ア 特許庁の審査基準第2部第1章1.1(4)には、自然法則の利用について、原告が引用する、「・・・逆に、発明を特定するための事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断されるときは、その発明は、自然法則を利用したものとなる。」との記載の他に、「・・・発明を特定するための事項に自然法則を利用している部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していないと判断されるときは、その発明は、自然法則を利用していないものとなる。」との記載もある。これら両方の記載を併せて考えると、発明とは通常発明を特定する事項が複数寄り集まって構成されているものであるが、個々の発明を特定する事項に自然法則が利用されている部分があってもなくても、それに基づいて即座に自然法則を利用しているか否かを判断するのではなく、請求項に係る発明を全体として捉えて自然法則を利用しているか否かを判断するのではなく、請求項に係る発明を全体として捉えて自然法則を利用しているか否かを判断するべきであることを説示するものである。
 イ 特許法第2条の「自然法則」は、広義での自然法則のことをいっているのではなく、端的にいえば、エネルギー保存の法則、万有引力の法則、熱力学の法則などの自然界の現象に直接関わる法則のことであり、広義、狭義でいえば、狭義での自然界に関する法則である。したがって、社会法則、心理法則、経済の法則など、狭義の自然界に関する法則以外の法則は、特許法第2条の「自然法則」にはあたらない。
 ウ 自然法則、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠としていることと自然法則を利用していることとは同義ではない。自然法則を根拠とした定説は、自然法則そのものではなく、自然法則に対する人間の知見が加わった概念と考えられるから、自然法則を根拠とした定説を用いるからといって自然法則を利用することにはならない。
 したがって、自然法則を根拠とした定説を利用して対語を羅列化することは自然法則を利用した対語の羅列化とはいえず、原告の主張する二つ目の羅列化についても、社会常識からして、表現を行う行為は著作に当たり、表現物は著作物に当たるとみるのが至当である。
 エ 以上のとおり、本願発明は、特許法でいう自然法則を利用した発明とはいえないものである。
 第4 当裁判所の判断
 1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯)、(2)(発明の内容)、(3)(審決の内容)の各事実は、当事者間に争いがない。
 事案にかんがみ、取消事由2(特許法第2条でいう「自然法則」を利用した発明ではないとの判断の誤り)の有無についてまず判断する。
 2 取消事由2について
(1)ア 平成18年07月26日付けの補正後の本願明細書(乙1)の【発明の詳細な説明】の段落【0001】〜【0013】、【0032】〜【0035】には、次の記載がある。
 「【技術分野】
 本発明は、人工知能等において、今まで不可能であった宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の一連の法則(段落)を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠に、記号化した対語を用いて理論化しようとするものである。」(段落【0001】) 
 「【背景技術】
 言語を羅列化するということ、また言語の羅列において、次の「0003」、「0004」、「0005」段落で述べられる三種類の形態に分類できる。」(【段落【0002】)
 「先ず一つ目は、規範法則を利用して言語を羅列化することである。因みに学校などでは規範文法として教えている。」(段落【0003】)
 「二つ目は、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)言語を羅列化することである。」(段落【0004】)
 「三つ目は、規範法則、自然法則のどちらをも根拠とせず、一般に無意味な言語の羅列と言われるものである。なぜなら、何かしらの法則を利用しておらず、人の心の働きや人間の精神活動だけで羅列されたようなものであるからである。」(段落【0005】)
 「というように、言語を羅列化するということ、また言語の羅列において、以上のように三種類の形態がある。」(段落【0006】)
 「そして、結論から先に述べれば、先の「0004」段落で述べられた言語羅列を活用すれば、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の一連の法則(段階)を理論化できうる可能性がある。なぜなら、その言語羅列に普遍性が見出せる部分があるからである。」(段落【0007】)
 「一方、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想は、古来より様々な形で論じられ、実証されてきている。だが、その宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想に、何らかの一連の法則があるとは論じられていても、記号を用いて体系的に理論として証明する術がなかった。また、現状も個別には詳細に研究されてはいても、一般人には「辞書による語彙定義だけである」と言っても良いほどの形式上のもので、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想に、一連の何らかの法則があるという考えについても古来より殆ど進展はない。相変わらず一般人には縁遠く、専門家だけのものであると言っても良い状況である。」(段落【0008】)
 「しかし、先の「0007」段落で述べたように、「0004」段落で記載された言語羅列を活用すれば、その何らかの一連の法則があるとは論じられていても記号を用いて体系的に理論として証明する術がなかった宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の一連の法則(段階)を、理論化できうる可能性が見出せうる。」(段落【0009】)
 「理由は「0007」で述べたとおり、その言語羅列に普遍性が見出せる部分があるからである。だが、数多ある言語を羅列化するとなると膨大であり、また複数の意味を持つ言語もある等で、その状況下ではとても理論化できうる状況ではない。また、それは逆に複雑怪奇な印象を与えてしまい、ますます一般人を宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想から遠ざけてしまうという欠点ともなりうる。」(段落【0010】)
 「そこで、記号化した対語だけを用い、実証された自然法則で根拠付け、その記号化した対語を羅列化する事で、今まで不可能であった宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、コンパクトに、そして限定的に理論化することが可能である。そしてそれはまたある意味において、各思想の内容理解を簡潔にし、一般人にも普段馴染みのある対語だけを用いた為に、難解な各思想に容易に親しめるという特徴をも同時に持つものである。」(段落【0011】)
 「図1(判決では、図1-1、図1-2、図1-3、図1-4、図1-5、図1-6)は、記号化する対語の定義であり、図2は、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇に、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にして、図1で記号化した対語を振り分けしたものである。図3は、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇に、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にして、図1で記号化した対語を振り分けたものである。図4は、図2(判決では、図2-1、図2-2、図2-3、図2-4、図2-5、図2-6)・図3での対語を、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化のそれぞれ思想の範疇で、更に詳細に根拠付けて羅列化したものであり、先ほど説明したコンパクト化に、そして簡潔化に成功したものである。」(段落【0012】)
 「そして図4での記号化した対語の羅列に、普遍性が見出せるのであれば、理論の定義に照らし合わせる事により、理論として成り立つことになる。つまり、自然法則を利用した理論となる。」(段落【0013】)
 「図1(判決では、図1-1、図1-2、図1-3、図1-4、図1-5、図1-6)は、記号化した対語の定義である。」(段落【0032】)
 「図1(判決では、図1-1、図1-2、図1-3、図1-4、図1-5、図1-6)で定義付けた記号化した対語は、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠にして、図2(判決では、図2-1、図2-2、図2-3、図2-4、図2-5、図2-6)で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇を、それぞれの定義に照らし合わせて選別したものである。逆に図3は、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇に、自然科学、社会科学、人文科学の定説を根拠に、記号化した対語の定義を照らし合わせて振り分けたものである。」(段落【0033】)
 「図4は、図2(判決では、図2-1、図2-2、図2-3、図2-4、図2-5、図2-6)・図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇に振り分けられた記号化した対語を、その記号概念の対象事物発生順に羅列化したものである。勿論、その羅列化は現代科学(自然科学、社会科学、人文科学)が明らかにした自然法則の事実と定説だけを根拠にして羅列化されたものである。」(段落【0034】)
 イ 本願の【図面】(平成16年03月02日付け補正後のもの。乙2)は、別紙のとおり、図1、図2(判決では、図1-1〜6、図2-1〜6)、図3、図4から成っている。そして、図1(判決では、図1〜6)においては、「記号化した対語」として、「丁半」、「上下」、「体用」、「伯叔」等の多くの言葉が記載されている。図2(判決では図2-1〜6)においては、それらの言葉が、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分類され、分類の理由が記載されている。例えば、「丁半」は、「文明開化」に分類され、その理由について「丁半という対語が成り立つには、双六がいる。丁を偶数、半を奇数と考える事も出来るが、丁半とは双六の采の目の事である。」と説明されている。「上下」は、「人類誕生」に分類され、その理由については「上下という概念は人類の判断基準である。」と説明されている。「体用」は、「宇宙論」に分類され、「体用という対語が成り立つには、先ず事物がいる。」と説明されている。「伯叔」は、「生命誕生」に分類され、「伯叔という対語が成り立つには、先ず生命がいる。」と説明されている。図3は、図2(判決では、図2-1〜6で分類した言葉を、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載したもの、図4は、図3で宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである。
 ウ 本願の特許請求の範囲「請求項1」の記載を、上記アの【発明の詳細な説明】及びイの【図面】の記載をさんしゃくして解釈すると、特許請求の範囲「請求項1」の「・・・記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけの定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化すること」は、数多の対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したことを意味するということができる。
 (2) 特許法第2条1項は、「この法律で『発明』とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定している。
 本願発明は、前記(1)のようなものであり、数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない。
 原告は、自然法則は、辞書では、「自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、自然法則等のうち規範法則に属さないものを指す。」と定義されている(広辞苑〔第5版〕1175頁)ところ、特許法第2条1項の「自然法則」は、この辞書の定義のうち広義のものを指す、と主張する。しかし、法律の条文にある用語は、必ずしも上記のような一般的辞書によって解釈しなければならないものではなく、これを含めた社会一般通念及び特許法等の当該法律全体の趣旨を踏まえて解釈すべきものである。のみならず、仮に、原告が主張するように広義に解したとしても、本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない。原告の上記主張は失当である。
 また原告は、「言語、文字、記号は、人工の道具である」とか「記号活動は物理的出来事として再現可能なものである」などとも主張するが、これらの主張は、何ら上記判断を左右するものではない。
 3 結語
 以上のとおり、本願発明は、特許法第2条1項が規定する「発明」に当たらないから、特許法第29条1項柱書きにより特許を受けることができないとした審決の判断は正当として是認できる。
 そうすると、取消事由1(特許法第36条6項2号の要件を満たしていないとの判断の誤り)について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がない。
 よって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。

 知的財産高等裁判所 第2部 裁判所裁判官 中野哲弘 ・裁判官 森義之 ・裁判官 澁谷勝海

裁判例情報:判決文」 
 平成19(行ケ)10067  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成19年6月14日  知的財産高等裁判所

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平成19年06月21日  上告状兼上告受理申立書  提出

平成19年06月21日
上告人兼申立人            岡本幸裕
被上告人兼相手方  特許庁長官 中嶋 誠

 上記当事者間の東京高等裁判所 平成19年(行ケ)第10067号 審決取消請求事件につき、同裁判所が平成19年06月14日に言い渡した判決(上告人兼上告受理申立人に平成19年06月16日送達)は、不服であるから上告及び上告受理の申立てをする。

-控訴審判決の表示-
 1 原告の請求を棄却する。 2 訴状費用は原告の負担とする。
-上告の趣旨-
 原判決を破棄し,更に相当の裁判を求める。
-上告受理申立の趣旨-
 1 本件上告を受理する。 2 原判決を破棄し,更に相当の裁判を求める。
-上告兼上告受理申立の理由-
 各々の上告理由書及び上告受理申立理由書を追って提出する。
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平成19年08月06日 上告理由書提出  
上告提起事件番号 平成19年(行サ)第10030号
上告人    岡本 幸裕
被上告人  特許庁長官 中嶋 誠

上告理由書
最高裁判所 御中

冒頭事件につき、上告人は、上告理由書を提出する。

目次
一.事件の経緯
(1)特許庁における事件の経緯
(2)知的財産高等裁判所における事件の経緯
(3)最高裁判所(上告手続)における事件の経緯
二.原判決には、判断遺脱の違法がある為、法令の解釈適用を怠り、憲法に違背する
三.原判決は、法令の解釈適用を誤り、憲法に違背する
四.結語
 
一. 事件の経緯
(1)特許庁における事件の経緯
 上告人は、発明の名称を「記号化した対語の羅列により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する方法」とする発明について、平成15年09月17日に特許出願をしたが、起案日平成16年08月09日付の拒絶理由通知書を受け、更に起案日平成17年02月28日付の拒絶査定を受け、また更に起案日平成18年05月18日付の拒絶理由通知を受けたので、同年07月26日、これに対する不服の審判を請求した。 被上告人(特許庁)は、上記請求を不服2005−5670号事件として審理をした上、平成18年12月27日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、其の謄本は平成19年02月03日に上告人に送達された。
(2)知的財産高等裁判所における事件の経緯
 上告人は、平成19年02月19日付の訴状を平成19年02月18日に郵送にて提出をした。その後、知的財産高等裁判所において、事件番号:平成19年(行ケ)第10067号審決取消請求事件として、平成19年04月12日、平成19年06月07日と二度の弁論準備手続が開廷され、そして平成19年06月14日、主文「1.原告の請求を棄却する。2.訴訟費用は原告の負担とする。」との判決が言い渡された。其の判決は平成19年06月16日に上告人に送達された。
(3)最高裁判所(上告手続)における事件の経緯
 上告人は、平成19年06月21日付の最高裁判所宛上告状兼上告受理申立書を、知的財産高等裁判所に同日郵送にて提出をした。その後、知的財産高等裁判所より、平成19年07月02日付の上告提起通知書及び上告受理申立て通知書が同日上告人に送達された。
二.  原判決(註1)には、判断遺脱の違法がある為、法令の解釈適用を怠り、憲法に違背する(註1:原判決とは、平成19年(行ケ)第10067号審決取消請求事件の平成19年06月14日知的財産高等裁判所での判決の事である〔以下同じ〕)  
 (1) 原判決は「第4 当裁判所の判断 2(1)イ」において、「・・・図4は、図3で宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである」と判示してあるが、その箇所は本願(註2)の明細書において「図4は、図2・図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇に振り分けられた記号化した対語を、その記号概念の対象事物発生順に羅列化したものである。勿論、その羅列化は現代科学(自然科学、社会科学、人文科学)が明らかにした自然法則の事実と定説だけを根拠にして羅列化されたものである」と述べてあること、更に明細書には「【図4】図3で振り分けた記号化した対語を、更に先に書き連ねた参考文献、非特許文献2、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10に記述された自然法則を根拠に、その記号化した対語の語彙概念の発生した順に羅列したものであり、更にその羅列した順に連番を付したものである」と述べてあることを見落とし、判断遺脱したとしか言えない。その判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反する。(註2:本願とは、特願2003−363862号のことである〔以下同じ〕)
  (2)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(1)ウ」において、『本願の・・・(省略)・・・特許請求の範囲「請求項1」の「・・・記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけの定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化すること」は、数多の対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したことを意味するということができる』と判示してあるが、本願の特許請求の範囲「請求項1」には「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術」と明記してあることを考えれば、原判決には特許請求の範囲「請求項1」に更に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱があり、それらの判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反する。(註2:本願とは、特願2003−363862号のことである〔以下同じ〕)
  (3)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、「・・・本願発明は、前記(1)のようなものであり、数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない」と判示しているが、先の二.(1)で述べたように、特許請求の範囲「請求項1」に更に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱があり、それらの判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反する。
  (4)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、「・・・本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない」と判示しているが、先の二.(2)、二.(3)で述べたように、特許請求の範囲「請求項1」に更に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱があり、それらの判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反する。
  (5)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、『・・・また原告は、「言語、文字、記号は、人工の道具である」とか「記号活動は物理的出来事として再現可能なものである」などとも主張するが、これらの主張は、何ら上記判断を左右するものではない』と判示しているが、先の二.(2)、二.(3)、また二.(4)で述べたとおりであり、更に本願は「著作権法第2条一項の規定する「思想又は感情を創作的に表現したもの」で保護するのみならず、更に特許法第2条で「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」であり、詰まるところ、「自然法則を利用した技術的思想」である。また、特許法、著作権法、ベルヌ条約において、特許法での保護との著作権法での保護の同時保護は排斥されていない(但し、コンピュータプログラム言語においては著作権での保護としているようである(審査基準第2部第1章1.1))のであるから、判決においての「・・・何ら上記判断を左右するものではない」との更なる判示は、二度も特許法第2条を正しく適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反するものと言える。
  (6)原判決は「第4 当裁判所の判断 3」において、『・・・本願発明は、特許法第2条1項が規定する「発明」に当たらないから、特許法第29条1項柱書きにより特許を受けることができないとした審決の判断は正当として是認できる。そうすると、取消事由1(特許法第36条6項2号の要件を満たしていないとの判断の誤り)について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がない』と判示しているが、先の二.(2)、二.(3)、更に二.(4)で述べたように、特許請求の範囲「請求項1」に更に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱があり、それらの判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反する。
三. 原判決は、法令の解釈適用を誤り、憲法に違背する
   (1)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、『・・・原告は、自然法則は、辞書では、「自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、自然法則等のうち規範法則に属さないものを指す。」と定義されている(広辞苑〔第5版〕1175頁)ところ、特許法第2条1項の「自然法則」は、この辞書の定義のうち広義のものを指す、と主張する。しかし、法律の条文にある用語は、必ずしも上記のような一般的辞書によって解釈しなければならないものではなく、これを含めた社会一般通念及び特許法等の当該法律全体の趣旨を踏まえて解釈すべきものである』と判示し、更に「仮に、原告が主張するように広義に解したとしても、本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない」と結論づけていることを鑑みると、判決では特許法第2条でいう「自然法則」が被上告人である特許庁の主張する「狭義の自然法則」だけなのか、それとも上告人の主張する「広義の自然法則」を含むものなのかを判断付けず、法令の解釈適用において二つの解釈を成り立たせたままとなっている。それは特許法第2条の解釈適用を誤ったとも言えなくもないものである故、憲法第76条3項に違反する。
   (2)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、『・・・本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない』と判示していることは既に二.(4)で述べたとおりだが、それに付随して本願発明が自然法則の利用が明確にあることを改めて主張する。其の詳細理由は本願明細書において既に説明済みであり、記号化した言語羅列には狭義の自然法則、広義の自然法則を利用して羅列することが可能である。であるからして、本願発明において「・・・自然法則を利用しているということはできない」及び「・・・自然法則の利用があるということはできない」との判示は、特許法第2条の解釈適用を誤ったものであり、憲法第76条3項に違反する。
 四. 結語
 先の通り、原判決は判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反し、また、特許法第2条の解釈適用を誤ったとも言えなくもないものであるが故、憲法第76条3項に違反することが明らかであり、日本国憲法に基づいた正当な判断を強く求めるものである。
以上
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平成19年08月06日 上告受理申立理由書提出
上告受理申立て事件番号 平成19年(行ノ)第10045号
申立人    岡本 幸裕
相手方    特許庁長官 中嶋 誠

上告受理申立理由書
最高裁判所 御中
冒頭事件につき、申立人は、上告受理申立理由書を提出する。何とぞ上告を受理願いたい。
     
目次
一.事件の経緯
(1)特許庁における事件の経緯
(2)知的財産高等裁判所における事件の経緯
(3)最高裁判所(上告手続)における事件の経緯
二.原判決には、判断遺脱の違法がある為、法令の適用の怠りがある
三.原判決には、法令の解釈適用の誤りがある
四.結語  

一. 事件の経緯
  (1)特許庁における事件の経緯
 申立人は、発明の名称を「記号化した対語の羅列により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する方法」とする発明について、平成15年09月17日に特許出願をしたが、起案日平成16年08月09日付の拒絶理由通知書を受け、更に起案日平成17年02月28日付の拒絶査定を受け、また更に起案日平成18年05月18日付の拒絶理由通知を受けたので、同年07月26日、これに対する不服の審判を請求した。 相手方(特許庁)は、上記請求を不服2005−5670号事件として審理をした上、平成18年12月27日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、其の謄本は平成19年02月03日に申立人に送達された。
  (2)知的財産高等裁判所における事件の経緯
 申立人は、平成19年02月19日付の訴状を平成19年02月18日に郵送にて提出をした。その後、知的財産高等裁判所において、事件番号:平成19年(行ケ)第10067号審決取消請求事件として、平成19年04月12日、平成19年06月07日と二度の弁論準備手続が開廷され、そして平成19年06月14日、主文「1.原告の請求を棄却する。2.訴訟費用は原告の負担とする。」との判決が言い渡された。其の判決は平成19年06月16日に申立人に送達された。
 (3)最高裁判所(上告手続)における事件の経緯
 申立人は、平成19年06月21日、同日付の最高裁判所宛上告状兼上告受理申立書を知的財産高等裁判所に郵送にて提出をした。その後、平成19年07月02日、知的財産高等裁判所より同日付の上告提起通知書及び上告受理申立て通知書が申立人に送達された。
二.  原判決(註1)には、判断遺脱の違法がある為、法令の適用の怠りがある(註1:原判決とは、平成19年(行ケ)第10067号審決取消請求事件の平成19年06月14日知的財産高等裁判所での判決の事である〔以下同じ〕)
 (1)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(1)イ」において、「・・・図4は、図3で宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである」と判示してあるが、その箇所は本願(註2)の明細書において「図4は、図2・図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇に振り分けられた記号化した対語を、その記号概念の対象事物発生順に羅列化したものである。勿論、その羅列化は現代科学(自然科学、社会科学、人文科学)が明らかにした自然法則の事実と定説だけを根拠にして羅列化されたものである」と述べてあること、更に明細書には「【図4】図3で振り分けた記号化した対語を、更に先に書き連ねた参考文献、非特許文献2、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10に記述された自然法則を根拠に、その記号化した対語の語彙概念の発生した順に羅列したものであり、更にその羅列した順に連番を付したものである」と述べてあることを見落とし、判断遺脱したとしか言えない。その判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反する。であるからして、上告を受理願いたい。 (註2:本願とは、特願2003−363862号のことである〔以下同じ〕)
  (2)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(1)ウ」において、『本願の・・・(省略)・・・特許請求の範囲「請求項1」の「・・・記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけの定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化すること」は、数多の対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したことを意味するということができる』と判示してあるが、本願の特許請求の範囲「請求項1」には「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術」と明記してあることを考えれば、原判決には特許請求の範囲「請求項1」に更に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱があり、それらの判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反する。であるからして、上告を受理願いたい。
   (3)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、「・・・本願発明は、前記(1)のようなものであり、数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない」と判示しているが、先の二.(2)で述べたように、特許請求の範囲「請求項1」に更に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱があり、それらの判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反する。であるからして、上告を受理願いたい。
   (4)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、「・・・本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない」と判示しているが、先の二.(2)、二.(3)で述べたように、特許請求の範囲「請求項1」に更に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱があり、それらの判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反する。であるからして、上告を受理願いたい。
   (5)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、『・・・また原告は、「言語、文字、記号は、人工の道具である」とか「記号活動は物理的出来事として再現可能なものである」などとも主張するが、これらの主張は、何ら上記判断を左右するものではない』と判示しているが、先の二.(2)、二.(3)、また二.(4)で述べたとおりであり、更に本願は「著作権法第2条一項の規定する「思想又は感情を創作的に表現したもの」で保護するのみならず、更に特許法第2条で「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」であり、詰まるところ、「自然法則を利用した技術的思想」である。また、特許法、著作権法、ベルヌ条約において、特許法での保護との著作権法での保護の同時保護は排斥されていない(但し、コンピュータプログラム言語においては著作権法での保護としているようである(審査基準第2部第1章1.1))のであるから、判決においての「・・・何ら上記判断を左右するものではない」との更なる判示は、二度も特許法第2条を正しく適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反するものと言える。であるからして、上告を受理願いたい。
   (6)原判決は「第4 当裁判所の判断 3」において、『・・・本願発明は、特許法第2条1項が規定する「発明」に当たらないから、特許法第29条1項柱書きにより特許を受けることができないとした審決の判断は正当として是認できる。そうすると、取消事由1(特許法第36条6項2号の要件を満たしていないとの判断の誤り)について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がない』と判示しているが、先の二.(2)、二.(3)、更に二.(4)で述べたように、特許請求の範囲「請求項1」に更に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱があり、それらの判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反する。であるからして、上告を受理願いたい。
三. 原判決には、法令の解釈適用の誤りがある
  (1)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、『・・・原告は、自然法則は、辞書では、「自然事象の間に成り立つ、反復可能で一般的な必然的関係。これは規範法則とは異なる存在の法則であり、因果関係を基礎とする。狭義では自然界に関する法則であるが、広義では社会法則、自然法則等のうち規範法則に属さないものを指す。」と定義されている(広辞苑〔第5版〕1175頁)ところ、特許法第2条1項の「自然法則」は、この辞書の定義のうち広義のものを指す、と主張する。しかし、法律の条文にある用語は、必ずしも上記のような一般的辞書によって解釈しなければならないものではなく、これを含めた社会一般通念及び特許法等の当該法律全体の趣旨を踏まえて解釈すべきものである』と判示し、更に「仮に、原告が主張するように広義に解したとしても、本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない(15頁14行〜18行)」と結論づけていることを鑑みると、判決では特許法第2条でいう「自然法則」が被上告人である特許庁の主張する「狭義の自然法則」だけなのか、それとも上告人の主張する「広義の自然法則」を含むものなのかを判断付けず、法令の解釈適用において二つの解釈を成り立たせたままとなっている。それは特許法第2条の解釈適用を誤ったとも言えなくもなく、憲法第76条3項に違反する。であるからして、上告を受理願いたい。
   (2)原判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、『・・・本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない』と判示していることは既に二.(4)で述べたとおりだが、それに付随して本願発明が自然法則の利用が明確にあることを改めて主張する。其の詳細理由は本願明細書において既に説明済みであり、記号化した言語羅列には狭義の自然法則、広義の自然法則を利用して羅列することが可能である。であるからして、本願発明において「・・・自然法則を利用しているということはできない」及び「・・・自然法則の利用があるということはできない」との判示は、特許法第2条の解釈適用を誤ったものであり、憲法第76条3項に違反する。それ故、上告を受理願いたい。  
四. 結語
 先の通り、原判決は判断遺脱故に特許法第2条を適用せず、特許法第1条及び憲法第76条第3項に違反し、また、特許法第2条の解釈適用を誤ったとも言えなくもないものであるが故、憲法第76条3項に違反することが明らかであり、日本国憲法に基づいた正当な判断を強く求めるものである。何とぞ上告を受理願います。
以上
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平成19年08月29日 記録到着通知書
平成19年(行ツ)第240号
平成19年(行ヒ)第259号

最高裁判所第三小法廷
裁判所書記官 田中 晃

記録到着通知書

 原裁判所から下記事件記録の送付を受けました。今後は、当裁判所で審理することになりますのでお知らせします。
 

1 当裁判所における事件番号
  平成19年(行ツ)第240号
  平成19年(行ヒ)第259号
2 当事者
   上告人兼申立人   岡本幸裕
   被上告人兼相手方  特許庁長官
3  原裁判所及び原審事件番号
   知財高等裁判所 平成19年(行ケ)第10067号
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平成19年10月02日

調書(決定)

事件の表示
平成19年(行ツ)第240号
平成19年(行ヒ)第259号
決定日
平成19年10月02日
裁判所
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 堀籠 幸男(敬称略以下同)
     裁判官 藤田 宙靖
     裁判官 那須 弘平
     裁判官 田原 睦夫
     裁判官 近藤 崇晴
当事者等
上告人兼申立人  岡本 幸裕(敬称略以下同)
被上告人兼相手方 特許庁長官 肥塚 雅博  
原判決の表示
知的財産高等裁判所:平成19年(ケ)第10067号(平成19年06月14日判決)

裁判官全員一致の意見で、次のとおり決定。
第1 主文
1 本件上告を棄却する。 
2 本件を上告審として受理しない。 
3 上告費用及び申立費用は上告人兼申立人の負担とする。
第2 理由
1 上告について
 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
2 上告受理申立について
 本件申立の理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。

最高裁判所第三小法廷 裁判所書記官 田中 晃(敬称略)
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平成19年10月13日 知的財産高等裁判所宛再審訴状提出

再審訴状

 再審原告  岡本 幸裕(敬称略以下同)
 再審被告  特許庁長官 肥塚 雅博

上記当事者間の知的財産高等裁判所 平成19年(行ケ)第10067号:審決取消請求事件につき、同裁判所(知的財産高等裁判所)が平成19年06月14日に言い渡し、再審原告が平成19年6月21日付で最高裁判所に上告し、平成19年(行ツ)第240号事件、及び平成19年(行ヒ)第259号事件として同裁判所(最高裁判所)第三小法廷において審理されていた事件が、平成19年10月02日に同裁判所(最高裁判所)第三小法廷において調書(決定)されたため、同日(平成19年10月02日)確定した判決に対して、再審の訴えを提起する。
 不服申立てにかかる判決の表示
  1 原告の請求を棄却する。  2 訴訟費用は原告の負担とする。
 再審の趣旨
  1 原確定判決を取り消す。  2 訴訟費用は、前審及び再審とも再審被告の負担とする。
 再審の理由
  原確定判決において、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったため、民事訴訟法第338条を根拠とし、確定した判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てる。  詳細な再審の理由に関しては、追って別紙にて補充する。
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平成19年11月09日 知的財産高等裁判所宛再審訴状提出

 再審訴状 (再審の理由)

 再審原告  岡本 幸裕(敬称略以下同)
 再審被告  特許庁長官 肥塚 雅博 殿

 再審の理由
 平成19年10月13日(日付同日付)既提出済み再審訴状の「再審の理由」の箇所において、「詳細な再審の理由に関しては、追って別紙にて補充する」と記載した通り、この訴状において詳細な再審の理由を以下に補充する。
 1.原確定判決は、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱がある。
 (1)原確定判決は「第4 当裁判所の判断 2(1)イ」において、「・・・(省略)・・・図4は、図3で宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである(14頁12行〜14行)」と判示してあるが、その箇所は本願(註1:本願とは、特願2003−363862号のことである〔以下同じ〕)の明細書【0034】段落において「図4は、図2(図2−1、図2−2、図2−3、図2−4、図2−5、図2−6)・図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇に振り分けられた記号化した対語を、その記号概念の対象事物発生順に羅列化したものである。勿論、その羅列化は現代科学(自然科学、社会科学、人文科学)が明らかにした自然法則の事実と定説だけを根拠にして羅列化されたものである」と述べてあること、更に明細書【0045】段落には「【図4】図3で振り分けた記号化した対語を、更に先に書き連ねた参考文献、非特許文献2、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10に記述された自然法則を根拠に、その記号化した対語の語彙概念の発生した順に羅列したものであり、更にその羅列した順に連番を付したものである」と述べてある。つまり原確定判決においては、記載された言葉が何を根拠にして(利用して)順序を付したものであるのかを明確とせずに、種類の中で順序を付したものであるとだけ判示してあり、更にはっきりと言えば、「それぞれの種類の中で順序を付けたもの」という表現が曖昧であり、何を利用して順序付けしたものかを判示していない。即ち、規範法則(規範文法)によって順序を付けたものなのか、自然法則で順序を付けたものなのか、それとも規範法則、自然法則のどちらをも利用せずに順序を付けたものなのか、確定判決では明確に判示していない。
 であるから、繰り返すが、明細書【0034】段落、更に明細書【0045】段落に明記されていること(判決に影響を及ぼすべき重要な事項)を見落とし、判断の遺脱をしている。
 (2)原確定判決は「第4 当裁判所の判断 2(1)ウ」において、『本願の特許請求の範囲「請求項1」・・・(省略)・・・特許請求の範囲「請求項1」の「・・・記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけの定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化すること」は、数多の対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したことを意味するということができる(14頁15行〜23行)』と判示してあるが、本願の特許請求の範囲「請求項1」には「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術」と明記してあることを考えれば、原確定判決には特許請求の範囲「請求項1」に更に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱がある。この箇所(判決に影響を及ぼすべき重要な事項)を見落とし、判断の遺脱をしたことにより、本願が「その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したことを意味するということができる(14頁21行〜23行)」との結論を導きだしている。  
 (3) 原確定判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、「・・・(省略)・・・本願発明は、前記(1)のようなものであり、数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない(14頁26行〜15頁5行)」と判示しているが、先の1.(2)で述べたように、本願の特許請求の範囲「請求項1」に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱がある。この箇所(判決に影響を及ぼすべき重要な事項)を見落とし、判断の遺脱をしたことにより、「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない(15頁1行〜15頁5行)」との結論を導きだしている。  
 (4)原確定判決は「第4 当裁判所の判断 2(2)」において、「・・・(省略)・・・本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない(15頁15行〜18行)」と判示しているが、先の1.(2)、1.(3)で述べたように、本願の特許請求の範囲「請求項1」に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱がある。この箇所(判決に影響を及ぼすべき重要な事項)を見落とさなければ(判断遺脱しなければ)、「言葉を分類整理するという発明の内容」との結論は導きだされるはずがない。  
 (5)原確定判決は「第4 当裁判所の判断 3」において、『・・・(省略)・・・本願発明は、特許法第2条1項が規定する「発明」に当たらないから、特許法第29条1項柱書きにより特許を受けることができないとした審決の判断は正当として是認できる。そうすると、取消事由1(特許法第36条6項2号の要件を満たしていないとの判断の誤り)について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がない(15頁23行〜16頁1行)』と判示しているが、先の1.(2)、1.(3)、更に1.(4)で述べたように、本願の特許請求の範囲「請求項1」に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、判決に影響を及ぼすべき重要な事項である請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱がある。この箇所(判決に影響を及ぼすべき重要な事項)を見落とさなければ(判断遺脱しなければ)、「本願発明は、特許法第2条1項が規定する「発明」に当たらない」との結論は導きだされるはずがない。  
 2.結語
 以上の通り、原確定判決において、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったため、民事訴訟法第338条を根拠とし、確定した判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てる。 

*註 平成19年12月25日付、準備書面の形式にて再審の理由の訂正あり  
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平成20年01月07日 知的財産高等裁判所 第2部宛提出

 意見書

 再審原告 岡本 幸裕
 再審被告 特許庁長官 肥塚 雅博
 再審被告指定代理人 内山 進
 再審被告指定代理人 山本 章裕

 上記当事者間の平成19年(行ソ)第10003号 再審請求事件について、再審被告は次のとおり違憲を述べる。
 1.再審被告の意見
 再審訴状(再審の理由)で再審原告が主張する再審の理由は、「原確定判決は、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱がある」というものであり、その内容は実質的に、
 (1)明細書【0034】段落、及び【0045】段落に明記されていることを見落とし、判断を遺脱した
 (2)本願の特許請求の範囲「請求項1」に明記されている「・・・理論化する」という概念の判断遺脱があり、また「・・・自然法則だけを利用して」及び「・・・記号化した対語だけ」、そして「・・・羅列化すること」という、請求項1に記載された特許請求の技術範囲は限定されていることの判断遺脱があり、その結果、誤った結論が導き出された
 というものである。
 しかしながら、上記理由は、いずれも本件上告理由書において上告の理由とされたものであるから、民事訴訟法338条1項ただし書きの規定によって、再審の事由となり得ない。
 なお、原確定判決は、判断する上で、その13頁17〜22行において【0034】段落を摘記し、また【0045】段落の内容に対応する図4についても参酌して判断しているから、上記(1)の判断の遺脱はない。また、上記(2)についても、原確定審決14頁「ウ」欄において、「・・・記号化した対語だけを用い、・・・・・その記号化した対語を羅列化すること」という、「理論化」の実質的な内容について判断しており、その中で、「・・・自然法則だけを利用して」、「・・・記号化した対語だけ」、及び「・・・羅列化すること」についても判断しており、遺脱はない。
 したがって、本件再審の訴えは不適法であり、却下されるべきものと思科する。
 以上
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平成20年01月21日 知的財産高等裁判所 第2部宛提出

 準備書面 

 再審原告 岡本 幸裕
 再審被告 特許庁長官 肥塚 雅博 殿

 上記当事者間の平成19年(行ソ)第10003号 確定判決取消請求事件(再審請求事件)に関する再審被告の平成20年01月07日付の意見書に対し、原確定判決においては判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があるため、再審原告は反論を述べる。その詳細は追って補充する。
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平成20年01月27日 知的財産高等裁判所 第2部宛提出

 準備書面

 再審原告 岡本 幸裕
 再審被告 特許庁長官 肥塚 雅博 殿

 平成20年1月21日付準備書面において、「上記当事者間の平成19年(行ソ)第10003号 確定判決取消請求事件(再審請求事件)に関する再審被告の平成20年01月07日付の意見書に対し、原確定判決においては判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があるため、再審原告は反論を述べる。その詳細は追って補充する」と記載したとおり、この書面においてその反論の詳細を以下に補充する。
 1.発明の根幹を判断していない。
 原確定判決「第4 当裁判所の判断 2(1)イ」(13頁23行〜14頁14行)において、「・・・図4は、図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである」と判示してあるが、「・・・言葉を、・・・順序を付けたものである」と言葉が順序付けできることは判示してあるが、その順序付けできる根拠が判断遺脱され、判示がなされていない。
 即ち、
1.自然法則を利用して順序を付けしたものなのか?
2.規範法則(あいうえお順、画数、及び規範文法など)を利用して順序を付けしたものなのか?
3.自然法則、規範法則のどちらをも利用せずに順序づけしたものなにか?
原確定判決においてはその順序付けした根拠を判断し、判示していない。
 であるから、民事訴訟法第338条の条文を根拠に再審の訴えを提起した。
2.民事訴訟法第338条但し書きの規定に抵触することはない。
 民事訴訟法第338条但し書きの規定に抵触するとの再審被告の意見書に関しては、上告において「順序付けした根拠」が判示されていないという観点からの事由主張はしていないし、そして同条但し書きの規定「・・・又はこれを知りながら主張しなかったとき」に関しても、上告理由書に主張された事由は、明細書の観点から発明が自然法則を利用したものであることを主張し、明細書の記載を判断遺脱してあることを主張したものであるから、「これを知りながら主張しなかったとき」とする根拠はなく、同条但し書きの規定に抵触することはない。           
 以上
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平成20年02月29日 決定

平成19年(行ソ)第10003号 審決取消請求再審事件(原確定判決・知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10067号)
再審原告 岡本 幸裕
再審被告 特許庁長官 肥塚 雅博
        指定代理人 山本 章裕
               内山 進

 上記当事者間の知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10067号審決取消請求事件について、同裁判所が平成19年6月14日に言い渡し平成19年10月2日確定した判決(原確定判決)に対し、同確定判決の原告であった再審原告から再審の訴えが提起されたので、当裁判所は次のとおり決定する。

 主文
 1 本件再審請求を棄却する。 2 再審費用は再審原告の負担とする。
 事実及び理由
 第1 再審原告が求めた裁判
 1 知的財産高等裁判所が平成19年(行ケ)第10067号審決取消請求について平成19年6月14日に言い渡した判決を取り消す。
 2 訴訟費用は、前審及び再審とも再審被告の負担とする。
 第2 事案の概要
 1 再審原告は、平成15年9月17日、名称を「記号化した対語の羅列化により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する方法」とする発明について特許出願をし(以下「本願」という。特願2003-363862号)、その後何度かにわたり明細書等の補正をしたが、平成17年2月28日拒絶査定を受けた。
 そこで再審原告は、平成17年4月1日付けで不服の審判請求を行ったので、特許庁は同請求を不服2005-5670号事件として審理し、その中で再審原告は、平成18年7月26日付けで明細書の補正をした(発明の名称も「記号化した対語の羅列化により、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化を理論化する技術」と変更された。)ものの、特許庁は、平成18年12月27日、「本件審判の請求は、成り立たない」旨の審決をした。
 なお、上記補正後の特許請求の範囲は、請求項1から成り、その内容は次のとおりである(以下「本願発明」という。)。
 「宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、記号等を用いて理論化することにおいて、記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化することで、限定的に、そしてコンパクトに理論化する技術。」
 2 再審原告は、上記審決に対して審決取消訴訟を提起した(知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10067号審決取消請求事件)ところ、同高等裁判所は、平成19年6月14日に再審原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。
 再審原告は、上記判決に対して、平成19年6月22日に上告(以下「本件上告」という。)及び上告受理の申立てをしたが、最高裁判所は、平成19年10月2日、上告を棄却し上告受理申立てを受理しない旨の決定をしたので、上記判決は同日確定した(以下「原確定判決」という。)。
 3 本件は、原確定判決の原告であった再審原告が原確定判決に対して、平成19年10月15日に再審の訴えを提起したものである。
 第3 当事者の主張
 1 再審原告
 原確定判決には、以下のとおり、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断に遺脱があるので、民訴法338条1項9号に規定する再審事由がある。
 (1)原確定判決は、本願発明につき、「図4は、図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである。」と判示した(14頁12行〜14行)が、この判示は、本願明細書の段落【0034】の記載(「図4は、図2(図2-1、図2-2、図2-3、図2-4、図2-5、図2-6)・図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想の範疇に振り分けられた記号化した対語を、その記号概念の対象事物発生順に羅列化したものである。勿論、その羅列化は現代科学(自然科学、社会科学、人文科学)が明らかにした自然法則の事実と定説だけを根拠にして羅列化されたものである。」)及び段落【0045】の記載(【図4】図3で振り分けた記号化した対語を、更に先に書き連ねた参考文献、非特許文献2、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10に記述された自然法則を根拠に、その記号化した対語の語彙概念の発生した順に羅列したものであり、更にその羅列した順に連番を付したものである。」)を見落とし、何を利用して順序付けしたのかを判示していないから、判断の遺脱がある。
 (2)原確定判決は、「特許請求の範囲『請求項1』の『・・・記号化した対語だけを用い、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の各思想を、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則だけを利用して(利用してとは、自然科学、社会科学、人文科学の自然法則の定説だけを根拠にしてということである)、その記号化した対語を羅列化すること』は、数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したことを意味するということができる。」と判示した(14頁16行〜23行)が、本願の特許請求の範囲請求項1の記載からすると、同請求項に明記されている「理論化する」という概念の判断遺脱があり、また、「自然法則だけを利用して」、「記号化した対語だけ」、「羅列化すること」という、同請求項に記載されて特許請求の技術範囲が限定されていることについての判断の遺脱がある。
 (3)原確定判決は、「本願発明は、・・・数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない。」と判示した(14頁26行〜15頁5行)が、このような結論は、上記(2)の判断遺脱によるものである。
 (4)原確定判決は、「本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない。」と判示した(15頁15行〜18行)が、このような結論は、上記(2)の判断遺脱によるものであり、上記(2)の判断遺脱がなければ、このような結論が導き出されることはない。
 (5)原確定判決は、「本願発明は、特許法2条1項が規定する『発明』に当たらないから、特許法29条1項柱書により特許を受けることができないとした審決の判断は正当として是認できる。そうすると、取消事由1(特許法36条6項2号の要件を満たしていないとの判断の誤り)について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がない。」と判示した(15頁23行〜16頁1項)が、このような結論は、上記(2)の判断遺脱によるものであり、上記(2)の判断遺脱がなければ、このような結論が導き出されることはない。
 2 再審被告
 (1)再審原告が再審事由として主張する事由は、いずれも本件上告において上告理由として主張された事由であるから、民訴法338条1項ただし書によって再審事由とはならない。
 (2)原確定判決は、本願明細書の段落【0034】を摘記し(13頁17行〜22行)、段落【0045】の内容に対応する図4についてもさんしゃくしているから、上記1(1)の判断遺脱はない。また、上記1(2)〜(5)についても、原確定判決は、14頁の「ウ」において、「理論化」の実質的な内容について判断しており、その中で「自然法則だけを利用して」、「記号化した対語だけ」、「羅列化すること」についても判断しており、遺脱はない。
 第4 当裁判所の判断
 1 本件記録によると、原確定判決は、原告であった再審原告主張の取消事由(特許法2条でいう「自然法則」を利用した発明ではないとの判断の誤り)について判断した上、審決の判断は正当として是認できるとして、原告の請求を棄却したものであり、再審原告が主張している事由(前記第3の1(1)〜(5))は、いずれもその判断中における、本願発明の認定及びそれに基づく本願発明が特許法第2条が規定する『自然法則』を利用したものであるかどうかの判断に関する事実誤認又は単なる法令違反を主張するものにすぎないから、そもそも民訴法338条1項9号が規定する再審事由(判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったとき)となるものではない。
 2 また、本件記録によると、再審原告が再審の訴えにおいて主張する点は、以下のとおり、原確定判決において判断されている。
 (1)前記第3の1(1)の事由
 原確定判決は、本願明細書の段落【0034】を摘記し(13頁17行〜22行)、段落【0045】の内容に対応する図4の内容を摘記した(14頁12行〜14行)上、これらを含む本願明細書の【発明の詳細な説明】及び【図面】の記載をさんしゃくして、本願の特許請求の範囲請求項1を解釈し(14頁15行〜下4行)、さらに、「本願発明は、・・・数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない。」(14頁26行〜15頁5行)、「仮に、原告が主張するように広義に解釈したとしても、本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない。」(15頁14行〜18頁)などと判示しているから、本願発明が何を利用して順序付けをしたのかを判断しているものである。
 (2)前記第3の1(2)〜(5)の事由
 原確定判決は、本願の特許請求の範囲請求項1に記載されている「理論化する」、「自然法則だけを利用して」、「記号化した対語だけ」、「羅列化すること」という各記載を含む特許請求の範囲請求項1を、本願明細書の【発明の詳細な説明】及び【図面】の記載をさんしゃくして、解釈しており(14頁15行〜下4行)、同請求項に記載された特許請求の技術範囲の解釈に判断の遺脱はないし、その解釈に基づく、「本願発明は、・・・数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない。」(14頁26行〜15頁5行)、「本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない。」(15頁15行〜18行)、「本願発明は、特許法2条1項が規定する『発明』に当たらないから、特許法29条1項柱書により特許を受けることができないとした審決の判断は正当として是認できる。そうすると、取消事由1(特許法36条6項2号の要件を満たしていないとの判断の誤り)について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がない。」(15頁23行〜16頁1行)との判示にも判断の遺脱はない。
 3 よって、本件再審請求を棄却することとして、主文のとおり決定する。

 知的財産高等裁判所 第2部
 裁判長裁判官 中野 哲弘  裁判官 森 義之  裁判官 澁谷 勝海
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平成20年03月09日 最高裁判所宛特別抗告状提出

 特別抗告状

 抗告人  岡本 幸裕
 相手方  特許庁長官 肥塚 雅博

 上記当事者間の知的財産高等裁判所 平成19年(行ソ)第10003号 審決取消請求再審事件(原確定判決・知的財産高等裁判所 平成19年(行ケ)第10067号)につき、同裁判所が平成20年02月29日にした決定(平成20年03月07日 上記抗告人の元に送達)は不服であるから、特別抗告を提起する。
 原決定の表示
 1 本件再審請求を棄却する。 2 再審費用は再審原告の負担とする。
 特別抗告の趣旨
 原決定を破棄し,更に相当の裁判を求める。
 特別抗告の理由(註:平成20年04月03日付 追記補充)
 平成20年03月09日(日付同日付)既提出済み特別抗告状の「特別抗告の理由」の箇所において、「追って提出する」と記載した通り、この特別抗告状において詳細な「特別抗告の理由」を以下に補充する。(註:平成20年04月03日付 追記補充)
   1.憲法第11条〔基本的人権の享有と性質〕違反である。
  原決定の「第4 当裁判所の判断1」は、再審原告が原確定判決(平成19年6月14日言い渡し、平成19年10月02日確定判決 以下同じ)「第4 当裁判所の判断 2(1)イ」(13頁23行〜14頁14行)の「・・・図4は、図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである」との判示が、「・・・言葉を、・・・順序を付けたものである」と言葉が順序付けできることは判示してあるが、その順序付けできる根拠が判断遺脱されて判示がなされていないとして再審請求したものに対し、「・・・特許法第2条が規定する『自然法則』を利用したものであるかどうかの判断に関する事実誤認又は単なる法令違反を主張するものにすぎないから、そもそも民訴法338条1項9号が規定する再審事由(判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったとき)となるものではない」(原決定5頁17行〜20行)と判断決定されたものである。 しかし、これは憲法第11条に違反する。なぜなら、何の法則を根拠にしているのかを明確にすることなく判じしてある原確定判決は、特許法第157条1項、及び2項4号規定を満たしていない。即ち、特許法第157条1項、及び2項4号規定で保障された「審決の結論及び理由」を述べていない。それは民訴法338条1項9号が規定する再審事由(判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったとき)に該当しないとの判断決定であるから、日本国民である抗告人の基本的人権の侵害に該当し、憲法違反している。
  2.憲法第19条〔思想及び良心の自由〕違反である。
 原決定の「第4 当裁判所の判断1」は、再審原告が原確定判決(平成19年6月14日言い渡し、平成19年10月02日確定判決 以下同じ)「第4 当裁判所の判断 2(1)イ」(原確定判決13頁23行〜14頁14行)の「・・・図4は、図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである」との判示が、「・・・言葉を、・・・順序を付けたものである」と言葉が順序付けできることは判示してあるが、その順序付けできる根拠が判断遺脱され、判示がなされていないとして再審請求したものに対し、「・・・特許法第2条が規定する『自然法則』を利用したものであるかどうかの判断に関する事実誤認又は単なる法令違反を主張するものにすぎないから、そもそも民訴法338条1項9号が規定する再審事由(判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったとき)となるものではない」(原決定5頁17行〜20行)と判断決定されたものである。 しかし、これは憲法第19条に違反する。なぜなら、本願発明(技術的思想)が何の法則を根拠にしているのかを明確にすることなく、ただ単に特許法第2条の自然法則を利用してないと判じしてある原確定判決は、特許法第157条1項、及び2項4号規定を満たしていない。即ち、特許法第157条1項、及び2項4号規定で保障された「審決の結論及び理由」を満たしていない。これは日本国民である抗告人の憲法第19条で保障された権利を根拠なくして侵害し、憲法違反をしている。   また、原決定の「第4 当裁判所の判断2(1)及び2(2)」は、再審原告が原確定判決(平成19年6月14日言い渡し、平成19年10月02日確定判決 以下同じ)「第4 当裁判所の判断 2(1)イ」(13頁23行〜14頁14行)の「・・・図4は、図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである」との判示が、「・・・言葉を、・・・順序を付けたものである」と言葉が順序付けできることは判示してあるが、その順序付けできる根拠が判断遺脱され、判示がなされていないとして再審請求したものに対し、「・・・『本願発明は、・・・数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない。』、『仮に、原告が主張するように広義に解釈したとしても、本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない。』などと判示しているから、本願発明が何を利用して順序付けをしたのかを判断しているものである」(原決定6頁2行〜13行)と判断決定され、更に「・・・『本願発明は、・・・・・・数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない。』、『本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない。』、『本願発明は、特許法2条1項が規定する発明に当たらないから、特許法29条1項柱書により特許を受けることができないとした審決の判断は正当として是認できる。そうすると、取消事由1(特許法36条6項2号の要件を満たしていないとの判断の誤り)について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がない。』との判示にも判断の遺脱はない」(原決定6頁20行〜7頁8行)と判断決定されている。 しかし、これは憲法第19条に違反する。なぜなら、本願発明(技術的思想)が何の法則を根拠にしているのかを明確にすることなく、ただ単に特許法第2条の自然法則を利用してないと判じしてある原確定判決は、特許法第157条1項、及び2項4号規定を満たしていない。即ち、これは日本国民である抗告人の憲法第19条で保障された権利を侵害し、憲法違反をしている。
  3.憲法第76条〔司法権、裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立〕違反である。
 原決定の「第4 当裁判所の判断1」は、再審原告が原確定判決(平成19年6月14日言い渡し、平成19年10月02日確定判決 以下同じ)「第4 当裁判所の判断 2(1)イ」(13頁23行〜14頁14行)の「・・・図4は、図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである」との判示が、「・・・言葉を、・・・順序を付けたものである」と言葉が順序付けできることは判示してあるが、その順序付けできる根拠が判断遺脱され、判示がなされていないとして再審請求したものに対し、「・・・特許法第2条が規定する『自然法則』を利用したものであるかどうかの判断に関する事実誤認又は単なる法令違反を主張するものにすぎないから、そもそも民訴法338条1項9号が規定する再審事由(判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったとき)となるものではない」(原決定5頁17行〜20行)と判断決定されたものである。 しかし、これは憲法第76条に違反する。なぜなら、何の法則を根拠にしているのかを明確にすることなく判じしてある原確定判決は、特許法第157条1項、及び2項4号規定を満たしていない。即ち、特許法第157条1項、及び2項4号規定で保障された「審決の結論及び理由」を満たしていないのに、民訴法338条1項9号が規定する再審事由(判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったとき)に該当しないとの判断決定であるから、裁判長裁判官 中野 哲弘を始め、裁判官 森 義之、澁谷 勝海は憲法第76条3項に違反する。

  以上、原決定の憲法違反は明らかである。 であるからして、原決定を破棄し,更に相当の裁判を求める。
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平成20年03月09日 知的財産高等裁判所宛抗告許可申立書提出

 抗告許可申立書

 申立人  岡本 幸裕
 相手方  特許庁長官 肥塚 雅博

 上記当事者間の知的財産高等裁判所 平成19年(行ソ)第10003号 審決取消請求再審事件(原確定判決・知的財産高等裁判所 平成19年(行ケ)第10067号)につき、同裁判所が平成20年02月29日にした決定(平成20年03月07日 上記申立人の元に送達)は不服であり、最高裁判所に対し、同決定を破棄した上、更に相当な裁判を求めるため、抗告許可の申立てをする。
 原決定の表示
 1 本件再審請求を棄却する。  2 再審費用は再審原告の負担とする。
  抗告許可申立ての趣旨
 本件抗告を許可する。
 抗告許可申立ての理由(註:平成20年04月03日付 追記補充)
 平成20年03月09日(日付同日付)既提出済み抗告許可申立書の「特別許可申立ての理由」の箇所において、「追って、提出する」と記載した通り、この抗告許可申立書において詳細な「特別許可申立ての理由」を以下に補充する。
 1.民事訴訟法第338条1項9号に違反する
 原決定の「第4 当裁判所の判断1」は、再審原告が原確定判決(平成19年6月14日言い渡し、平成19年10月02日確定判決 以下同じ)「第4 当裁判所の判断 2(1)イ」(13頁23行〜14頁14行)の「・・・図4は、図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである」との判示が、「・・・言葉を、・・・順序を付けたものである」と言葉が順序付けできることは判示してあるが、その順序付けできる根拠が判断遺脱され、判示がなされていないとして再審請求したものに対し、「・・・特許法第2条が規定する『自然法則』を利用したものであるかどうかの判断に関する事実誤認又は単なる法令違反を主張するものにすぎないから、そもそも民訴法338条1項9号が規定する再審事由(判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったとき)となるものではない」と判断決定されたものである。 しかし、これは民事訴訟法第338条1項9号に違反する。なぜなら、何の法則を根拠にしているのかを明確にすることなく判じしてある原確定判決は、憲法第19条〔思想及び良心の自由〕の侵害であり、それ故に憲法第98条〔憲法の最高法規性、条約・国際法規の遵守〕によって効力を有さず、民訴法338条1項9号が規定する再審事由(判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったとき)に該当する。
 2.特許法第157条、及び第174条に違反する。
 原決定の「第4 当裁判所の判断2(1)及び2(2)」は、再審原告が原確定判決(平成19年6月14日言い渡し、平成19年10月02日確定判決 以下同じ)「第4 当裁判所の判断 2(1)イ」(13頁23行〜14頁14行)の「・・・図4は、図3で、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類に分けて記載された言葉を、それぞれの種類の中で順序を付けたものである」との判示が、「・・・言葉を、・・・順序を付けたものである」と言葉が順序付けできることは判示してあるが、その順序付けできる根拠が判断遺脱され、判示がなされていないとして再審請求したものに対し、「・・・『本願発明は、・・・数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない。』、『仮に、原告が主張するように広義に解釈したとしても、本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない。』などと判示しているから、本願発明が何を利用して順序付けをしたのかを判断しているものである」(原決定6頁2行〜13行)と判断決定され、更に「・・・『本願発明は、・・・・・・数多くの対語となる言葉を、その意味する内容に則って、宇宙論、生命誕生、人類誕生、文明開化の4種類の思想に当てはめて、分類し、連ね並べて整理したものであって、その分類整理の過程において自然法則を考慮することがあったとしても、発明全体としてみた場合には、言葉(対語)を分類整理したものにすぎず、自然法則を利用しているということはできない。』、『本願発明においては、そのような自然法則は、分類整理の過程において考慮されているにすぎず、言葉を分類整理するという発明の内容自体に自然法則の利用があるということはできない。』、『本願発明は、特許法2条1項が規定する発明に当たらないから、特許法29条1項柱書により特許を受けることができないとした審決の判断は正当として是認できる。そうすると、取消事由1(特許法36条6項2号の要件を満たしていないとの判断の誤り)について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がない。』との判示にも判断の遺脱はない」(原決定6頁20行〜7頁8行)と判断決定されている。 しかし、これは特許法第157条、及び第174条に違反する。なぜなら、本願発明が何の法則を根拠にしているのかを明確にすることなく、ただ単に特許法第2条の自然法則を利用してないと判じしてある原確定判決は、特許法第157条1項、及び2項4号規定を満たしていない。即ち、特許法第157条1項、及び2項4号規定で保障された「審決の結論及び理由」を述べていない。 また、本願発明(思想)が何の法則を根拠とするのか結論づけることなく、判断決定したことは、日本国民である抗告人の憲法第19条で保障された権利を侵害し、憲法違反をしている。それ故に憲法第98条〔憲法の最高法規性、条約・国際法規の遵守〕によって効力を有さず、民訴法338条1項9号が規定する再審事由(判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったとき)に該当する。

 よって、平成20年02月29日にした決定(平成20年03月07日 上記申立人の元に送達)は不服であり、最高裁判所に対し、同決定を破棄した上、更に相当な裁判を求めるため、抗告許可の申立てをする。
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平成20年04月09日 決定

平成20年(行ハ)第10001号
申立人 岡本 幸裕
相手方 特許庁長官 肥塚 雅博

 上記当事者間の平成19年(行ソ)第10003号審決取消請求再審事件について、当裁判所が平成20年2月29日にした決定に対し、申立人から抗告許可の申立てがあってので、当裁判所は、次のとおり決定する。

 主文
 抗告を許可しない。
 理由
 本件抗告許可の申立ての理由には、上記決定について、民訴法337条2項所定の事項を含むものとは認められない。
 よって、主文のとおり決定する。

 平成20年4月9日
 知的財産高等裁判所 第2部
 裁判長裁判官 中野 哲弘  裁判官 森 義之  裁判官 澁谷 勝海
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平成20年07月17日 調書(決定)

事件の表示     平成20年(行ト)第26号
決定日        平成20年07月17日
裁判所        最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官   甲斐中 辰夫
     裁判官   横尾 和子
     裁判官   泉 徳治
     裁判官   才口 千晴
     裁判官   湧井 紀夫
当事者等
     抗告人   岡本 幸裕
     相手方   特許庁長官 鈴木 隆史
原裁判の表示   知的財産高等裁判所 平成19年(行ソ)第10003号(平成20年02月29日決定)

裁判官全員一致の意見で、次のとおり決定。
第1 主文
   1 本件抗告を棄却する。
   2 抗告費用は抗告人の負担とする。
第2 理由
 民事事件について特別抗告をすることが許されるのは、民訴法336条1項所定の場合に限られるところ、本件抗告理由は、違憲をいうが、その実質は原決定の単なる法令違反を主張するものであって、同項に規定する事由に該当しない。

平成20年07月17日
最高裁判所第一小法廷 裁判所書記官 今福 正己
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 皆様には研究の意義、必要性をご理解いただき、誠にありがとうございました。平成20年07月17日、最高裁判所小法廷の調書(決定)をもちまして、この度の特許庁出願番号:特願2003−363862に関する裁判は結審しました。ご協力をいただきました皆様には、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 さて、平成20年07月17日、最高裁判所小法廷の調書(決定)においても、出願者(抗告人)の主張は認められず、敗訴となりました。
 敗訴の原因は多々あろうかと存じますが、「言語を羅列する」事は整理分類することであって、「自然法則を考慮したとしても、自然法則を利用するということはない」と言うのが特許庁の判断であり、出願者(抗告人)の主張する「自然文法(自然法則を利用した文法)」などあり得ないということだった。
 そして特許庁の判断に一定のお墨付きが付いたわけであるが、その過程で弁理士の方々、弁護士の方々にご相談をさせていただきました。異口同音に「(言語は)先例がない」とよく言われました。先例、即ち判例や更には先人研究者の結論をもって説明することが出来ないということ。それは出願者のキャパシティが低いこともあるし、技術的意義や価値を高める説明が30歳という年齢もあって上手くできなかったと思う。それが敗訴原因の一番の要因だろうと考えています。
 
 そして研究に関しては、この度の最高裁判所小法廷での調書(決定)をもって一区切りつきました。研究自体は今後も進めようと考えています。何故なら、ご相談させていただきました様々な有識者の方が言うには、「特許法」は時代とともに変わる代物であり、以前は特許法での保護の対象外であったビジネス特許、遺伝特許関係も今では認められているという理由からです。特許査定に力を注いて生きてきた自分には、取り繕うような励ましの言葉にしか聞こえないものでもありますが、更には負け戦に負けを認めない素直さにかけるひねくれ者の言い訳のようでもありますが、事実「特許法」は時代とともに変わる代物であると思います。
 また、今後は数学の世界と言語の世界を繋ぐ鍵を私は見つけたようです。それは対語(対義語)と素数の性質を比較すると見えてくる科学の世界で、原子やニュートリノのレベルまで説明が可能であり、音楽の世界まで科学的説明ができると考えています。
 また政治的・宗教的な意義も絡んだ研究も進める所存です。それは高度な技術的思想が先人の科学者だけでなく、先人の政治家、思想家、宗教家の研究結果の礎に基づくものでもあるからです。
 勿論、反社会的勢力活動は一切致しません。この明記は研究者の出生系図が近衛家直系である為に記載いたします。国家転覆、世界転覆などは一切考えておりません。世界三大財務局(造幣局・郵便局・玩具局)構想などを主張して行政庁に玩具局機構創設を主張しております。だから反社会的勢力活動と誤解される恐れがありますが、我が先祖の中臣鎌足と同じように大化の改新を成し遂げた改革者みたいな者です。
 なお、日本や世界の教育機関等からの講師依頼や研究協力依頼は進んで応じさせていただきます。日本国だけではなく、世界も視野に入れたコレクションアイテムを扱う行政庁構想だからです。

 皆様には多分にご迷惑をおかけするかと存じますが、国際的な視点や宇宙規模の視点から研究の意義、必要性を今一層ご理解いただき、何とぞご協力いただけますようお願い申し上げます。なお、日本においては神代の家々、天皇家、関白家、将軍家に連なる家々の安泰は勿論、海外にルーツをお持ちの方々の安泰もお祈り申し上げます。世界の王家の皆様の幸せもお祈り申し上げます。